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マイケル・ジョーダンと藤井聡太の共通点は「負けず嫌いでありながら、負けることは失敗ではなく…」NBA大好き棋士・増田康宏がアツく語る 

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北野新太

北野新太Arata Kitano

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photograph byKeiji Ishikawa/Koji Asakura

posted2024/01/09 17:29

マイケル・ジョーダンと藤井聡太の共通点は「負けず嫌いでありながら、負けることは失敗ではなく…」NBA大好き棋士・増田康宏がアツく語る<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa/Koji Asakura

NBAを愛する棋士・増田康宏七段。マイケル・ジョーダンらバスケと将棋の共通点についてアツく語ってくれた

「GMのサム・プレスティが優秀だから、ということが大きいですね。プレスティは『常に今後10年間を見据え、10年間の全体でどのように勝っていけるかを思い描いている』と語っています。過去10年を振り返ると、ポール・ジョージ、ラッセル・ウエストブルック、クリス・ポールら看板選手を放出してドラフト指名権を得る一方、まだ成長途中だった時に獲得したシェイ・ギルジャス=アレクサンダーは絶対的なエースになりました。再建への考えが今季、ようやく結果として表れ始めていて、これから常勝軍団になっていくかもしれません」

NBAでも起きている“戦術のトレンド変化”とは

――勢力図だけでなく、NBAは戦術面のトレンドも2年前とは変わってきていますよね。

「今は少し不思議な時代で、クイックネスのあるガードが主流ということは変わっておらず、センターがポストアップできずにコーナーに追いやられている場面が常にありますけど、一方でビッグマン復権の動きもあります。

 ロケッツのマイクロボール(低身長の選手を揃える戦術)は結局成功しなかったですし、優勝していた頃のウォリアーズもガード陣が主体のスタイルなのでスモールラインアップと言われていましたが、実はウイングスパン(腕の長さ)も含めた各選手のサイズによって強力なディフェンスが構築できていたことが大きかったんですよね。今季のサンダーの躍進にしても、怪我から復帰した昨年のドラフト全体2位センターのチェット・ホルムグレン(216センチ)の活躍が利いているからなのかなと」

藤井さんはどんな時代でも必ずトップに立つ棋士ですよ

――トレンドという視点で見ると、将棋界も常にトレンドが移りゆく世界です。近年はAI研究が常識化した影響で、戦い方は変化しながら進化もしています。

「いや、個人的には将棋ってそこまで進化していないと思っているんです。確かに序盤の戦略への理解は進んだとは思いますが、終盤の精度が昔と比べて上がったかどうかは疑わしい。これはNBAではなくMLBの話なんですけど、最新データを採り入れたトレーニングを課すことによって投手の平均球速は上がり、打者の飛距離も伸びましたが、それと比例するように故障も増えました。

 同じように、将棋界もある点においてはレベルアップしているのかもしれませんけど、何かしらのデメリットも発生していると感じます。藤井聡太さんがAI研究の影響で物凄く強くなったと言う人もいますけど、ちょっと勘違いしていると思います。藤井さんはAIを使う前から強かったですから。どんな時代でも必ずトップに立つ棋士ですよ」

【次ページ】 藤井さんはジョーダンのように負けず嫌いでありながら…

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