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「シード落ち」危機もまさかの4位、東洋大は箱根駅伝でなぜ蘇った? 選手から不満も、1カ月で再建「酒井監督と松山主将の信頼物語」
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/06 06:00
3位城西大が見える位置の4位でゴールした東洋大学。10区の岸本遼太郎が区間賞の走りで脅威の追い上げを見せた
信頼関係の再構築を強く意識して、松山らが「3位」という目標を掲げたのが12月に入ってから。約1カ月という短期間でチームを変えるのには困難もあったはずだ。松山が振り返る。
「簡単なことではなかったんですけど、僕ら4年生に下級生がしっかりついてきてくれたんです。基本的なことに立ち返って、練習への信頼を再構築できたからこそ、箱根で挽回できたのかな、と」
同時期、故障が癒えた松山が練習に本格復帰したことも大きかった。酒井監督が振り返る。
「松山も本来はリーダータイプではないのですが、11月下旬に練習に復帰してからは本当に背中で引っ張ってくれました。グラウンドの空気が変わりましたから」
松山は1、2年で「花の2区」を走って好成績を納めた期待の星だった。ただ昨季は怪我で主要大会を欠場。今季も全日本大学駅伝を欠場するなど故障から出遅れていたが、チームにどうしても必要な存在だった。松山本人も自分の立場に自覚的だった。
「監督から『お前が走るかどうかでチームが変わってくる』と言われていたので、自分が引っ張らなければチームが上がってこない、と言い聞かせながら走っていました。足の痛みからもようやく解放されて、最後の最後に、チームのまとまりに貢献できたのかな、と感じていました」
酒井監督は、本当に選手に親身になってくれる方
主将としてスタッフとの信頼関係を回復させ、エースとして4区で区間2位の力走。11月以降の松山はチームを救ったことになる。ただ本人は至って謙虚だ。
「下級生たちがついてきてくれたおかげです。2区を走った梅崎(蓮)や3区の小林(亮太)はシーズンを通して練習を引っ張ってくれましたし、10区で区間賞をとった岸本(遼太郎)も最後に急激に調子をあげてきていた。梅崎が次期エース? そうですね。2区を走っただけじゃなくて結果も残してくれましたから、僕の中の何かを受け継いでくれたかな。それに酒井監督は、本当に選手に親身になってくれる方なんです。ここまで選手のことを考えられるのか、というくらい寄り添ってくれますから」
酒井監督の声が届いていなかった理由
ただ、今回の4区、その指揮官の運営管理者からの声がけは、ほとんど届いていなかったという。