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兵庫で県立進学校野球部が優勝候補と“2年連続大接戦”のナゼ…ブラジル帰りの監督が危惧する「野球の未来」《掛け声は「バモス!」》 

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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posted2023/12/05 06:01

兵庫で県立進学校野球部が優勝候補と“2年連続大接戦”のナゼ…ブラジル帰りの監督が危惧する「野球の未来」《掛け声は「バモス!」》<Number Web> photograph by Fumi Sawai

現在、兵庫県立御影高校野球部で指揮を執る今泉友秀監督。ブラジルで野球を指導して野球という競技の普及に危機感も覚えたという

 サンパウロでは行く先々にサッカー場があり、野球の練習の休憩時になると子どもたちはサッカーに興じていた。

 サッカーのように野球も気軽に始められるスポーツとして認知されていくにはどうすればいいのか――。野球のあり方を考えさせられる2年間だった。

 帰国後、1年間伊丹北高に勤務し、翌年の19年春より御影高校に赴任した。

 前述のように住宅地に囲まれた学校の敷地内にあるグラウンドでサッカー部、ラグビー部などとスペースを分け合いながら完全下校の18時まで、創意工夫を重ねながら練習を重ねる日々が続くが、最近は新たな問題にも直面している。

「新型コロナウイルス感染拡大を経て、子供たちの体力が落ちているんです。特に現高校1年生は中学3年間でほとんど部活ができていない。じゃあトレーニングで体力をつければいいとなりますが、そういった時間をなかなか確保できないのが現状です。短時間で無理してトレーニングをさせると今度はケガをしやすくなる。練習はしたいけれど、無理はさせたくないというのが本音です」

「結局はほとんどの学校が負けて終わる」

 そこで指揮官が考えたのが「原点に戻る」ことだった。

「小学校で野球を始めた頃は、楽しくやっていたと思うんです。楽しくてもっとやりたくなって、そこからさらにうまくなりたいから、うまくなるにはどうするか考えるようになります。高校野球は県大会でトーナメントを戦うにしても、甲子園に行ける学校は、160校ほどある兵庫県でも夏は1校だけ。甲子園で優勝する学校も49校のうち1校だけです。結局はほとんどの学校が負けて終わる。野球は勝ち負けじゃないと昔から言ってはいましたが、負けるにしても負け方が大事だと選手たちにはよく言います」

 実は御影高校はまだ県ベスト16に進出したことがない。結果だけを見ればまだ途上の最中という印象を受けるが、今泉監督はその試合ひとつひとつの内容にとことんこだわり続けてきた。

「10―0で勝ってもいい試合だったかと言われたら心に残らない試合もあります。反対に、負けても力を出し切れればいい試合になる。相手がいいプレーをすれば褒めたらいいし、自分でもいいプレーが出来るように1プレーにこだわろうと。その上でいい試合になればいい」

【次ページ】 東洋大姫路、神戸国際大附ら優勝候補校と大接戦!

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