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甲子園の風BACK NUMBER
兵庫で県立進学校野球部が優勝候補と“2年連続大接戦”のナゼ…ブラジル帰りの監督が危惧する「野球の未来」《掛け声は「バモス!」》
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2023/12/05 06:01
現在、兵庫県立御影高校野球部で指揮を執る今泉友秀監督。ブラジルで野球を指導して野球という競技の普及に危機感も覚えたという
東洋大姫路、神戸国際大附ら優勝候補校と大接戦!
21年夏は2回戦で東洋大姫路と対戦したが1-2で敗れた。
昨夏は1回戦から優勝候補と目された神戸国際大付と対戦するも1-3で敗退。だが、ヒット数は、御影は4本、神戸国際大付は6本とほぼ互角の勝負を演じた。
「あの試合は監督をやってきて一番の試合でした。私学に対して動じずに試合ができたのは僕が求めてきたことで、どんな相手でもいい試合ができればと思っていました。その1球、1プレーに後悔のないよう、自分が思うようにやれていたのなら結果はいいと。三振しても自分の思うようなスイングができていたのならいいんです。勝ち負けは相手があることですから」
近年は学校の部活でも週休二日制が浸透しつつあり、御影高校野球部でも月によっては2度、週休二日制を設けている。受験準備の関係もあり、冬場は日曜日を完全オフにすることもある。夏場は3連休とした日もあった。
「1日だけ休んでもリフレッシュできないし、他にもやりたいことがあるでしょうしね。そちらもやりながら、楽しく野球をやって欲しいんです」
練習でも強制は一切なく、今泉監督が選手に練習メニューを渡し、細かい要素は選手たちにアレンジさせる。
「こんな風にするといいよ、とは言いますが、その先は彼らが工夫して練習しています。工夫できないこともあるけれど、それができないという経験もした方がいいんです」
そう口にし、グラウンドにいる選手に目をやりながら指揮官はこう続けた。
「御影高校で野球をやりたくて集まってきたのではなく、御影高校に集まった子たちでウチは野球をやっていますので」
“野球しようや!”と言わんばかりに、明るく生き生きとした表情で動き回る23人の部員たちの姿がグラウンドに映える。今泉監督がかつてブラジルで見た光景……とまでは言わないが、野球少年の本来あるべき姿が、御影高校のグラウンドにはある。
時折選手らが交わす「バモス!」の掛け声が、いつまでも耳に心地よく響き渡っていた。