- #1
- #2
酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「阪神ファンの多くが“山本由伸ラスト登板”を最後まで」「道頓堀では外国人観光客が珍しそうに…」日本シリーズ関西対決“ウラ探訪記”
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2023/11/06 17:55
“日本ラスト登板”で完投勝利した山本由伸。阪神ファンも凝視していた
その一方で京セラドームは便宜上アウェーのはずだが、阪神ファンは「人の家に上がらせてもらった」みたいな遠慮は全くない。
「おお、ここやここや、甲子園みたいな風情ないけど、まあええやん」
と言いながら虎のユニフォームの面々が乗り込んでくる。春と夏の高校野球の間、阪神は京セラドームで主催試合をしているから「勝手知ったる他人の家」になっている。ざっと見て京セラドームでも阪神ファン55%、オリックスファン45%くらいだった。さらにドーム周辺も、虎の法被の集団が肩で風を切って歩いている。その威圧感はオリックスファンの比ではない。
ではあるが――11月4日の第6戦のこと。山本由伸が138球の熱投で自責点1、シリーズ新記録の14奪三振で完投した試合では、かなり多くの阪神ファンが、席を立たずに山本のインタビューを聞いていた。
彼らもこれが、この不世出の投手の、日本でのラスト登板になりそうなことを知っていて、最後のシーンを見届けようとしていたのだ。
阪神が負けても「ええ試合やったなあ」「オリ、やるやん」
シリーズが深まるとともに、阪神が負けた試合でも、帰途「ええ試合やったなあ」という阪神ファンの声をいくつか聞いた。7試合も戦ううちに、同じ関西人の心やすさもあって、親近感が出てくるようだ。段々に「オリックス、やるやん」というリスペクトもにじみ出てきたのだろう。
最終戦は、オリックスから見ると宮城大弥がシェルドン・ノイジーに3ランホームランを打たれて以降、割とあっさりした勝負になった。筆者はオリックスサイドの一塁側で観戦していたが、9回2アウトになると周囲から「あと一人」の声が上がった。阪神ファンはこちら側にも相当数いたことにあらためて気づかされた。
シリーズ終了直後の道頓堀付近に行ってみると…
岡田彰布監督の優勝監督インタビューを聞いて球場を飛び出し、JR大正駅の角を曲がって汐見橋を通って道頓堀まで歩いた。途中までは不気味なほどに静まり返っていたが、道頓堀が近づくと上空にヘリコプターが飛び回り、物々しい空気になった。
そしてタイガースのユニフォームを着た群衆が六甲おろしや選手の応援歌を歌いながら御堂筋を北から南に歩いて、道頓堀方面に集結しようとしている。