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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「もりしたー、ホンマは岡田監督、嫌いなん違うかー」甲子園で見た阪神ファンの“TVに映らない”ディープな習性「セデーニョ!っちゅう顔や」
posted2023/11/06 17:54
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kiichi Matsumoto
筆者はここ数年、日本シリーズはすべて観客席で見ているが、今年のオリックス−阪神は、他のカードとは別物だった。「阪神」というチームが一方にいることで、観客席はこんなにも変わるのか、と思った。
生まれてから筆者はずっと関西に住んできたが、阪神ファンだった期間はなかった。日ごろから、そのことをちょっと自慢げに言っていたのだが、〈阪神ファンとは何ぞや〉ということを深く知らなかったのだと思う。
「日本一早いマジックボード」商店街での思い出
阪神電鉄沿線の「尼崎中央三丁目商店街」は、阪神が1勝したら「マジック143から142」になる「日本一早いマジックボード」があることで有名だ。これを始めてもう20年以上になる。筆者は仕事で行ったことがあるが「面白いですね」と言っても、商店主は「ま、あんなもんや」と歯牙にもかけない。
阪神ファンにとっては、傍から見れば異様なことでも「当たり前」になっていることがいくつもある。
甲子園の3試合は一塁側アルプス席の下段で観戦した。
甲子園では、オリックスの応援席に指定された左翼外野席上段以外のすべてが、阪神ファンでびっしり埋まっていたから、どこで見ても同じようなものではあるが、とりわけアルプス席は「尼崎中央三丁目商店街」みたいに、しょうゆで煮しめたような阪神ファンが参集していた。私を除く全員が、阪神のユニフォームを身にまとっているのは言うまでもない。
「ゴンザレス、だるいわー」「セデーニョ! ちゅう顔や」
とにかく、彼らの会話が尋常ではない。
若い衆がオリックスの外国人選手についてわあわあ言っている。
マーウィン・ゴンザレスが安打を打つと……。
「ゴンザレス、だるいわー」
「守備でもすごいプレーするし、めっちゃだるいわー」
「だるい」は、鬱陶しいとか、目障りだというニュアンスだが――阪神ファンにかかれば、時として褒め言葉になる。
つづいて、レアンドロ・セデーニョが代打で出てくると……。