酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「バウアー32歳が中4日フル回転」背景抜きに“見習え”は危険では…山本由伸3年連続、東克樹が奮投も「沢村賞」基準が“昭和のまま”
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS/Nanae Suzuki
posted2023/11/02 11:02
バウアーと山本由伸。サイ・ヤング賞経験者と3年連続沢村賞右腕の成績を中心に、先発投手の意義について考えてみると……
そもそも今どきのNPBで、登板数、完投数、勝率などを目標にしている投手や投手コーチはほとんどいないのではないか。
「沢村賞では見ない指標」を比較してみると
上記を勘案した新たな基準として、IP/G(先発投球回/先発数=先発登板における平均イニング数)、K9(9イニング当たりの奪三振数)、K/BB(奪三振数/与四球数)、HR9(9イニング当たりの被本塁打数)、QS(6回以上投げて自責点3以下)率の5つを設定し、両リーグ規定投球回数以上の3傑を出すとこうなる。
〈IP/G〉
◇パ・リーグ
山本由伸(オ)7.13(164回/23試)
上沢直之(日)7.08(170回/24試)
加藤貴之(日)6.81(163.1回/24試)
◇セ・リーグ
東克樹(De)7.18(172.1回/24試)
戸郷翔征(巨)7.08(170回/24試)
伊藤将司(神)6.98(146.2回/21試)
〈K9〉
◇パ・リーグ
山本由伸(オ)9.27(169振/164回)
平良海馬(西)9.18(153振/150回)
伊藤大海(日)7.87(134振/153.1回)
◇セ・リーグ
今永昇太(De)10.58(174振/148回)
高橋宏斗(中)8.94(145振/146回)
村上頌樹(神)8.54(137振/144.1回)
〈K/BB〉
◇パ・リーグ
山本由伸(オ)6.04(169振/28球)
加藤貴之(日)5.19(83振/16球)
宮城大弥(オ)3.94(122振/31球)
◇セ・リーグ
村上頌樹(神)9.13(137振/15球)
東克樹(De)8.87(133振/15球)
今永昇太(De)7.25(174振/24球)
〈HR9〉
◇パ・リーグ
山本由伸(オ)0.11(2本/164回)
則本昂大(楽)0.41(7本/155回)
宮城大弥(オ)0.43(7本/146.2回)
◇セ・リーグ
柳裕也(中)0.34(6本/158.1回)
高橋宏斗(中)0.37(6本/146回)
九里亜蓮(広)0.41(8本/174.1回)
〈QS率〉
◇パ・リーグ
山本由伸(オ)91.3%(21QS/23試)
加藤貴之(日)79.2%(19QS/24試)
平良海馬(西)78.3%(18QS/23試)
◇セ・リーグ
東克樹(De)87.5%(21QS/24試)
村上頌樹(神)85.7%(18QS/21試)
山﨑伊織(巨)78.3%(18QS/23試)
こうして新たな5項目で選ぶと、山本由伸はすべての部門で、ダントツのリーグトップであることが分かる。特に被本塁打2は驚異的だ。これに対して東がトップなのはIP/GとQS率だけとなる。
この5項目は「運、偶然」の要素をできるだけ排除したものと言ってよいが、この数値を見れば山本由伸の沢村賞は、当然であることがはっきりわかる。
堀内委員長の“バウアー絶賛”に思うこと
今回の沢村賞の発表で気になったのは、堀内恒夫選考委員長のDeNAトレバー・バウアーに対する発言である。