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「バウアー32歳が中4日フル回転」背景抜きに“見習え”は危険では…山本由伸3年連続、東克樹が奮投も「沢村賞」基準が“昭和のまま”
posted2023/11/02 11:02
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
JIJI PRESS/Nanae Suzuki
今年の「沢村賞」は大方の予想通り、オリックスの山本由伸が3年連続の受賞となった。
本人は10月28日の日本シリーズ第1戦でKO負けを食らったばかりだから、気持ちは晴れないかもしれない。出来れば日本シリーズ第6戦以降でリベンジを――と思っているだろうが、空前の偉業であるのは間違いない。
3年連続沢村賞は1956~58年の金田正一(国鉄)以来2人目。パでは初だが、そもそも沢村賞は1988年まではセだけの賞だった。もしパも含めていれば、稲尾和久(西鉄)などが該当した可能性はあるだろう。
山本由伸と東克樹の成績を比較してみる
今回の沢村賞は、DeNAの東克樹との一騎打ちと言われた。両投手を沢村賞選考基準で比較する。カッコ内はリーグ順位、Tは順位タイ。登板試合数は先発のみ。○が選考基準到達で、●が未到達。
〈登板試合数 - 25試合以上〉
山本 23試合(7T)●
東 24試合(4T)●
〈完投試合数 - 10試合以上〉
山本 2完投(5T)●
東 4完投(1T)●
〈勝利数 - 15勝以上〉
山本 16勝(1)○
東 16勝(1)○
〈勝率 - 6割以上〉
山本 .727:16勝6敗(1)○
東 .842:16勝3敗(1)○
〈投球回数 - 200イニング以上〉
山本 164.0回(2)●
東 172.1回(2)●
〈奪三振 - 150個以上〉
山本 169(1)○
東 133(6)●
〈防御率 - 2.50以下〉
山本 1.21(1)○
東 1.98(2)○
〈QS(Quality Start)数〉※先発で登板した全試合に占める、投球回数7回で自責点3点以内の試合数
山本 17(QS率73.9%)
東 19(QS率79.2%)
QS数を除く7項目中、山本は4つをクリア、東は3つ。しかし数字的には登板数、完投試合数、勝率、投球回数で東が上で、QS数でも東が勝っている。東は山本ほど目立たなかったが、素晴らしい活躍だった。一部にはダブル受賞の声が上がったというが、それも肯ける東の頑張りではあった。
ただし山本は今年も「勝利数」「勝率」「奪三振」「防御率」でリーグ1位、投手4冠は3年連続であり、この数字に東が肩を並べたとは言い難いとは思う。
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毎年「沢村賞」の記事を書いていて思うのは、これらの選考基準のほとんどは、もはや「過去のもの」であり、今のプロ野球で目標にする投手は皆無だろうという点である。