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「シーズン中なら絶対やらんやろ」阪神・岡田彰布監督の独断は流れを変える一手に?「ここは湯浅にかけるしかないと」《サヨナラ劇の伏線》
posted2023/11/02 15:17
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Nanae Suzuki
最後は4番のバットが決めた。
3対3の同点で迎えた9回裏の阪神の攻撃。1死から近本光司外野手が四球を選ぶと、マウンドのジェイコブ・ワゲスパック投手の2つの暴投で一気に1死三塁とチャンスが広がる。打席の中野拓夢内野手がフルカウントとなったところで、オリックス・中嶋聡監督は申告敬遠を指示。さらに続く3番の森下翔太外野手も申告敬遠で塁を埋める。選んだのは阪神の4番・大山悠輔内野手との勝負だった。
「(目の前の敬遠策には)別に何もない。より冷静にと思って打席に入った」
試合後には言葉少なにこう振り返ったが、大山の胸の内には自分のバットで勝利を呼び込むことしかなかったはずだ。フルカウントからの7球目、内角高めの148kmのツーシームを叩く。打球が三遊間を破った瞬間に、右手の拳を一塁ベンチに突き上げた大山に向かって選手が走り出して、ベンチはもぬけの殻となった。
オリックスが2勝1敗と勝ち越して迎えた日本シリーズ第4戦は、阪神・岡田彰布監督とオリックス・中嶋監督による死力を尽くすベンチバトルの戦いとなった。
中嶋監督の9回の2つの申告敬遠もそうだったが、負ければ王手をかけられる岡田監督も激しく動いた。
2点リードで迎えた7回だ。
佐藤輝明交代と8回のピンチ
先頭の廣岡大志外野手のゴロを、三塁を守る佐藤輝明内野手がバウンドを合わせ損ねて弾くエラー。このミスをきっかけに代打のレアンドロ・セデーニョ内野手の左前安打、送りバントで作った1死二、三塁から2番手の桐敷拓馬投手がオリックスの2番・宗佑磨内野手に同点タイムリーを浴びた。すると桐敷から石井大智投手への交代に合わせ、ダブルスイッチで佐藤をベンチに下げた。