第100回箱根駅伝(2024)BACK NUMBER
関東地区以外にも門戸を開放した箱根駅伝予選会。「出てよかった」と充実感をにじませた選手たちの声と、まだ残る課題
text by
藤井みさMisa Fujii
photograph byYuki Suenaga
posted2023/10/31 10:00
第100回箱根駅伝予選会後に、取材に対応する皇學館大学の寺田監督
強化、特別なことはせず…それぞれ異なるアプローチ
強化への取り組みもさまざまだ。
皇學館大の監督は、國學院大學時代に箱根駅伝を4回走っている寺田夏生が務める。皇學館大は6月に全日本大学駅伝東海地区選考会で出場を逃し、7月に寺田が新監督に就任してから箱根駅伝予選会への出場を決めた。決定から3か月足らずの時間しかなかったため、体づくりというよりは距離に対する不安、抵抗感をなくすつもりでロング走を週1回始めることから取り組んできた。自身も箱根駅伝予選会を経験しているが、学生たちには「公園内が一番きついぞ」とアドバイスをしたぐらいで、変に先入観を入れることなく好きに走ってほしいと考えていた。順位は全体の35位。「関東の壁は高かったですね」というが、「フィニッシュした後みんな充実した顔をしていたので、本当に予選会に参加して良かったなと思いました」と話す。
札学大は、年々チーム力が上がっており練習の質も上がっているという前提はあるが、これまでの取り組みから一切変えることなく箱根駅伝予選会に臨んだという。鹿内万敬監督は「あくまでこれまでのスケジュールの流れで、ひとつレースが増えたという位置付け」と話す。箱根駅伝予選会にも「関東の力のある選手の5kmから10kmのスピードを体感する」というスタンスで臨んだ。チーム日本人トップは佐藤魁良寸(3年)の1時間5分50秒だが、渡邊隼翼(3年)が10kmすぎまで前方の集団に食らいつくなど、改めて選手の強さを感じられる場面ともなった。「ただ、この挑戦が正解なのかは、全日本大学駅伝が終わらないとわからないかなとは思います」。全日本大学駅伝3週間前にハーフマラソンを走ったダメージがどこまで出るかは未知数だと鹿内監督は口にした。
「関西の雄」立命大は、関東地区以外の大学の中で最も早く箱根駅伝予選会への出場を表明した。例年よりも夏合宿を増やし、距離を多く踏むことを意識してきた。エースの大森駿斗(3年)は1時間3分49秒で全体の89位と健闘。倉本眞子主務は「(出雲駅伝からの)4日間はすごく短かったですが、チームとしても挑戦してよかったと思います」という。
大経大「出ないのはもったいないなと…」
同じ関西圏でも、大経大が箱根駅伝予選会出場を決めたのはエントリー締め切りギリギリになってからだったという。出雲駅伝、全日本大学駅伝に出場予定の主力ではなく、下級生を中心にエントリー。「現地でしか味わえない刺激や経験があって、これに出ないのはもったいないなと感じました」と真木美羽主務は話した。この2年出雲駅伝、全日本大学駅伝、丹後駅伝と3つの駅伝への出場が続く中で、チーム力を上げようと走行距離を伸ばす取り組みを行なった。チーム力が全体的に上がったことで予選会への挑戦も現実的になった。
関西内でも箱根駅伝予選会の参加を見送った大学もある。関西大学は今年、7年ぶりに全日本大学駅伝の出場権を獲得。チーム内のほぼ全員が「箱根駅伝予選会に出たい」という気持ちはあったが、「出雲駅伝、全日本大学駅伝の出場権をせっかく勝ち取ったのだから、そこに集中せずに悔いが残るのはどうか」と話し合い、参加を見送りふたつの駅伝に集中して取り組んだ。結果として、関大は出雲駅伝で11位と、関東地区以外の大学でトップとなった。