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「一つだけお願い…」ロッテ・吉井理人監督はそのとき何を切り出した? 延長10回3点差から大逆転…“劇的突破”を叶えた指揮官の「言葉術」 

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梶原紀章(千葉ロッテ広報)

梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara

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photograph byChiba Lotte Marines

posted2023/10/18 12:20

「一つだけお願い…」ロッテ・吉井理人監督はそのとき何を切り出した? 延長10回3点差から大逆転…“劇的突破”を叶えた指揮官の「言葉術」<Number Web> photograph by Chiba Lotte Marines

大逆転劇でのCSファイナル進出。選手たちは歓喜の輪を作った

劇的勝利の試合後に語った言葉は…

 1勝1敗。勝っても負けても終わりという状況で迎えた10月16日の3戦目は劇的なゲームとなった。9回までは両軍無得点。息詰まる投手戦となったが、試合は突然、動き出す。延長10回。ホークスに3点を先制され万事休すと思われたが、その直後、連打で無死一、二塁とすると藤岡裕大内野手が同点の3ラン。さらに二死一塁から安田尚憲内野手がサヨナラ打を放った。延長に入り、3点取られ、その裏に4点奪う劇勝でファイナルステージ進出が決まった。

 指揮官は選手と一緒になって抱き合って喜ぶと一人一人に声をかけながら、グラウンドではしゃいだ。サヨナラのヒーローの安田には「“スーパー安田”だったなあ」と叫び、握手をした。シーズンを通じて安田には練習中に声を掛けてきた。一番、多かった言葉は「きょうは“スーパー安田”やな。よっしゃあ、頼むぞ」。大一番の土壇場で期待をかける若手のホープはスーパーな輝きを放った。ただ、試合後は冷静だった。あらためてロッカーに全員を集め、士気をさらに高めるため言葉を並べた。

「みんな逆転してくれてよかったです。ありがとうございます。これで次にいけるので、このシリーズで残念な想いをした人もチャンスが来たので、また張り切ってプレーしましょう」

時には青空の下、時には質問形式で

 盛り上がった場で、選手たちの思いをさらに結束させる。短い言葉ではあったが、指揮官の言葉でその場の空気がグッと引き締まった。

 振り返るとここまで様々なパターンでミーティングを行ってきた。連敗中にグラウンドの真ん中で青空ミーティングを行ったこともあった。練習前に行うこともあれば、試合直前に召集したこともあった。2位から4位に転げ落ちた時期には手法を変え、「今の状況をどう感じているかな?」と質問形式で行ったこともあった。

 自チームを客観的に分析してもらいたいとの思いから移籍組の選手や外国人選手を中心に指名し、チームの現状をどう思うか。前、所属していたチームとの違いはどのあたりだと思うかを質問したこともあった。色々な言葉で色々な状況で様々な手法で言葉を発した。口にした言葉によって考え、気づきがあればと願っていた。

「そこは自分なりに色々、考えながら言っている。他の人みたいにカッコいい言葉とか心に染みるようなくさい言葉はなかなかないけど、自分なりにどういえば伝わるか、事前に考え込んで決めている。話すタイミングも頻繁では、選手たちも慣れが出てしまう。タイミングを見計らって、ここまで話をしてきたつもり」(吉井監督)

【次ページ】 オリックス優勝に「あれが勝者の音」

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