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「私は生理をどれだけ知っているだろう」元五輪スイマーが、男性スポーツ指導者に伝えたいこと「“わからない”のは悪いことではないのです」
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2023/10/31 11:02
ロンドン五輪での伊藤華英さん
実際にスポーツ庁のデータを見ると、女性の指導者が27.5パーセントであるのに対し、男性は72.5パーセント。7割を占めています。
筋力など、身体の構造において男女差はあります。それは、思春期を迎えると顕著に現れます。女性は女性ホルモンによる心身の変化、男性は男性ホルモンによる心身の変化が起こります。ですが、選手のパフォーマンスを高める、求める技術を得るための指導をすることにおいて、本来男女の差はありません。ただし、生理に関して言うならば、ほとんどの女性が自分の身体で経験しているのに対して、男性には生理の経験がありません。
つまり、「わからない」。
これは決して悪いことではなく、当たり前のことです。
大前提として「男性と女性は身体が違う」
お腹が痛い、イライラする、出血量が多い。女性同士ならば何でもない話も、男性が聞くと何を言っているのかわからず、想像すらできないかもしれない。そもそも「わからない」ということを男性指導者が自身でも理解していれば、専門家の指導や診断を受けたほうがいいと婦人科の受診を勧めることもできるでしょう。しかし、「生理は病気ではないんだから」とか、女性ホルモンの影響でイライラしたり、気分が落ち込んでいると言っても「メンタルが弱い」という答えが返ってくる場合もあります。
大前提として「男性と女性は身体が違う」ということ。わかりきっているようで、きちんと理解している人は少ない。違いがあることを知っておくのは、とても大切なことです。
<第3回「セクハラかも…悩む人への指南」編に続く>