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「私は生理をどれだけ知っているだろう」元五輪スイマーが、男性スポーツ指導者に伝えたいこと「“わからない”のは悪いことではないのです」
posted2023/10/31 11:02
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
09年に胸椎のヘルニアと膝の脱臼をしたこともあり、ロンドンは背泳ぎから自由形に転向して臨んだオリンピックでした。4年前と同じように厳しい選考会を突破して、迎えた本番。
ロンドンオリンピックの結果は200メートル自由形で1分59秒62、準決勝敗退となり決勝進出はできませんでした。しかし望み通り、悔いなく最後のオリンピックを終えることができました。
そしてもう一つ。実はロンドンオリンピック前にアメリカのカリフォルニア州でおこなわれた、サンタクララ国際大会で自己ベストタイムを出してしまった。それも私らしいなと感じています。
人生とは面白いものだと実感するのはここから。幼い頃からプールと共にある生活を送り、泳いでばかりいた私。しかも当時は「不甲斐ない結果だった」「取り返しがつかない」とさえ思っていた生理とコンディションにまつわる出来事が、自身を思わぬ方向へと導いていくことになるのです。
知っているようで、知らない生理
きっかけは2017年にスポーツ総合誌「Number」のウェブサイトに寄稿した1本のコラムでした。
「女子選手が必ず直面する思春期問題。伊藤華英が語る生理と競技の関係。」というタイトルで、私は自身の経験に重ね、10代の女性アスリートに生じる身体の変化、月経困難症、PMS(月経前症候群)や運動性無月経など、当時は特にタブー視されがちだった生理の話を記しました。
そして文章の最後には、16年のリオデジャネイロオリンピックで、競泳中国代表のフ・ユアンフイ選手が400メートルリレーの後に「生理中で自分の泳ぎができず、チームメイトに謝った」と発言したことが話題になった、という事実にも触れました。
私もこの発言を聞いた時は驚いたのです。