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「私は生理をどれだけ知っているだろう」元五輪スイマーが、男性スポーツ指導者に伝えたいこと「“わからない”のは悪いことではないのです」
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2023/10/31 11:02
ロンドン五輪での伊藤華英さん
女性にとって生理は身近な存在であるとはいえ、自分から「私の場合は……」と話すことではないし、ましてや「生理中だったので自分の泳ぎができなかった」など、自分の中で考えることはあっても人前で言う話ではないはず。
そもそも私は、「今日の調子はどうですか?」と取材で聞かれるたびに、すべてを細かく話すのではなく、少し曖昧に「調子は良いです」と答えることを常としてきました。理由は簡単、自分の調子を口にする必要はないし、結果がすべての世界なのだから体調が悪くてもそれを言葉にしてしまうこと自体が、言い訳になるような気がしていたからです。
私は生理についてどれだけのことを知っているだろう
そこに突然「今日は生理だから」と宣言する選手が現れ、しかも理想通りに泳げなかった理由として挙げている。レース後にそこまで言っていいのか、というのが当時の正直な感想でした。ですが、今頑張っている女性アスリートに少しでも役立ててもらいたい思いを込めて準備したのが前述のコラムです。
医学的な知識も記事内に書くので、自分で勉強するのはもちろん、婦人科の先生にも専門的見地からアドバイスや指摘をいただきながら書き上げました。そして、よし書けたと、それなりの手ごたえで送り出しました。しかし、その反響には思った以上のものがありました。
アスリートがレース後に、生理での不調がうまくいかない理由だと挙げていた。しかもそのコラムを書いたのも、元アスリートであるということが、想像以上に話題となったのです。
その時、ふと考えました。私は生理についてどれだけのことを知っているだろう。いや、私だけでなく、周りで同じように生理の症状に悩む女性たちにどれだけの理解があるのだろう、と。
だって、ピルって避妊をするためのものだし
振り返れば、国際大会で顔を合わせてきた同年代の海外選手たちは10代の頃からピルを服用している選手も多く「どうして飲まないの?」と聞かれることもしばしばありました。
でもその時、こう思っていたのです。