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「ツル、ダメだよ」大谷翔平の“相棒”キャッチャーが「対戦打者に叱られた」話…和田一浩の“試合中のひと言”に、鶴岡慎也はなぜ喜んだか?
text by
鶴岡慎也Shinya Tsuruoka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/11 17:00
日本ハム時代、鶴岡慎也とマウンド上で会話を交わす大谷翔平(2013年)
鶴岡の悩みを吹き飛ばした「ツルさ~ん、お久しぶりです」
さて、今回のWBCで再会するとき、実は私には大きな悩みがありました。
私が日本ハムに復帰した18年、入れ違いで大谷選手は海を渡りました。あちらは今や世界一有名な野球選手と言っても過言ではありません。テレビ画面の向こうの別の世界の人なのです。
(10年前のように「翔平」って、先輩面して軽々しく呼び捨てにしていいものかな……)
大谷選手はそんな私の悩みを知ってか知らずか、私を見つけるや声を掛けてきてくれたのです。
「ツルさ~ん、お久しぶりです」
「お、しょ、翔平……」
「ところで、何でブルペンキャッチャーしてるんですか?」
「栗山監督に言われて、ピッチャーの球を受けることになったんだよ。よろしくな」
何も変わっていなかった。杞憂でしたね。すぐ距離を縮めてくれて、話し掛けやすい雰囲気を作ってくれました。野球選手としての技術はもちろん誰しもが認めるところですが、彼のことを悪く言う人は皆無です。どうすればこんなに素直に育つのか、同じ社会人野球チーム出身の縁で、大谷選手のご両親に「子育て論」を訊いてみたいものです。
1年目の大谷は「スッポ抜け」が多かった
プロ1年目の大谷選手は、投手で13試合3勝0敗、防御率4.23の成績を残しています。ちなみにダルビッシュ投手の1年目は14試合で5勝5敗、防御率3.53でした。
私は大谷選手の「プロ初登板キャッチャー」「プロ初勝利キャッチャー」でした。プロ初登板、初先発のヤクルト戦でストレートは157キロをマークし、5回2失点(5月23日=札幌ドーム)。プロ初勝利の中日戦で5回3失点(6月1日=札幌ドーム)。変化球はカーブ、スライダー、フォークボールを持っていました。
最大の長所はストレートが速いことです。ただストレートも変化球も、ボールの縫い目に指がかかった「いい球」は少なく、「スッポ抜け」が多かったのです。
だから、その試合その試合で「どれをカウント球にしよう」「どれを決め球にしよう」と、こちらも手探りの状態でした。もちろん、すべての球に「超一流への伸びしろ」を感じました。しかし現在の圧倒的な投球を10割とするなら、当時は1、2割に過ぎません。1年目の完成度という点においては、ダルビッシュ投手のほうが断然高かったです。