濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
ボブ・サップにクラウス…格闘レジェンド敗北の「いったいナゼ?」 大物たちがハマった“1分間格闘技”ブレイキングダウンの罠
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/08/31 17:01
『BreakingDown9』に出場したボブ・サップは“ラグビーYouTuber”ノッコン寺田に判定負け
元K-1勢で勝てたのはバンナだけ
結果、元K-1勢で勝利したのはバンナだけだった(メインでキム・ジェフンをKO)。サップは“ラグビー系YouTuber”ノッコン寺田に判定負け。クラウスは朝倉未来のもとで活動するMMAファイターの西谷大成にダウンを奪われて敗れた。TATSUJIは元ボクサーのほっそん相手に不完全燃焼。
印象的だったのは、判定を聞いたTATSUJIの「これで終わり?」とでも言いたげな表情だ。本人としては延長戦をやりたかったのだろう。ただ1分間の中でも手数に差があり、判定は妥当に思える。
ブレイキングダウンの常連であるほっそんに対し、TATSUJIはオーディション後に本格的な練習を開始したという。彼も40歳を超えているが「1分間なら」と自分の力に自信を持っていた。だが実際には、1分間で力を出し切ることができなかった。
サップも手数、アグレッシブネスで劣勢だった。クラウスは大会前日の会見で「ファイトはファイト。1分でも10分でも違いはない」と言っていた。しかし実際には違いがあったのだ。朝倉未来も言うように、ブレイキングダウンは他の格闘技とは「別競技」だ。
ブレイキングダウンの“罠”
もちろん“レジェンド”たちの衰えも指摘しなければならない。勝ったバンナは昨年もMMAの試合をしており、つまり“現役感”があった。しかしサップとクラウスは試合のペース自体が落ちており、結果も出ていない。TATSUJIはすでにプロ選手としては引退している。
ブレイキングダウンの常連選手たちとは、コンディションの段階で差があったのではないか。加えて1分間という超短期決戦。3分3ラウンドの中で試合を組み立てるのと、1分間で力を爆発させるのではまったく違う。たとえ1分間でも全力で打ち合い続けたら、スタミナも消耗する。
ブレイキングダウンには、視聴者に「俺でもできる」、「俺でも勝てる」と思わせるところがある。そのハードルの低さも魅力なのだ。本格的な格闘技の試合はできないが1分間殴り合うだけなら、と。
だが実際には、1分には1分の難しさがあり、そこで求められる戦略もあり、最終的には“実力”がなければ勝てない。K-1のレジェンドたちも“ブレイキングダウンの罠”にハマったと言えるのかもしれない。