- #1
- #2
甲子園の風BACK NUMBER
慶応・丸田湊斗の魅力は“プリンスよりもギャップ”「本塁打をためていたのかな」「2回連続で“若き血”を」18歳のスゴい“自己プロデュース”力
posted2023/09/01 11:00
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Hideki Sugiyama
人を惹きつける要素のひとつに「ギャップ」がある。イメージや想像との違いが大きいほど、人は興味を引かれる。高校野球に自主性や多様性の必要性を訴えた慶応は、高校野球の常識やイメージとの隔たりが大きいからこそ、注目を集めたと言える。
夏の甲子園は、慶応が107年ぶりの優勝を果たして閉幕した。この夏、日本一を目指してきた慶応には合言葉があった。「常識を覆して高校野球を変える」。高校野球界には髪型や指導者と選手の距離感など、一般社会では非常識にも見える慣習が少なくない。その常識を変える慶応の挑戦が、普段は高校野球を観る機会が少ない人たちも引き付けた。
あの先頭打者弾後、ベンチとスタンドを鼓舞した
2年連続の優勝を狙った仙台育英との決勝戦に勝利した最大の立役者は、1番・丸田湊斗選手だった。夏の甲子園史上初となる先頭打者本塁打を放ち、慶応応援団のスイッチを入れた。仙台育英の須江航監督が「丸田くんの本塁打で球場の雰囲気が慶応空間になってしまった」と敗因に挙げた一発だった。
甲子園の決勝戦で放った先頭打者弾は丸田にとって公式戦初めてのアーチで、高校通算18本目の本塁打だった。50メートル5秒9の俊足を生かした巧打の1番打者でありながら、長打力も兼ね備える。ただ、丸田の一番の強みは、ギャップを生かした自己プロデュース力にある。
仙台育英戦の初回、丸田は打球がライトスタンドに入ると確信すると、一塁ベースを回ったところで右足に装着していたレッグガードを荒々しく外した。そして、ベンチやスタンドを鼓舞するようなジェスチャーでダイヤモンドを一周した。
主将いわく「すかしているところはありますね」
丸田は端正な顔立ちから一部報道で“プリンス”と名付けられた。主将の大村昊澄選手は「すかしているところはありますね」と笑う。
その丸田が感情を爆発させれば、観客も仲間も盛り上がらないはずはない。
丸田は準々決勝の沖縄尚学戦で三塁打を放った時にも、二塁ベースを蹴ったところでレッグガードを脱ぎ捨てている。この後、相手のパスボールでダメ押しのホームイン。ひとつのプレーで最大限の効果を得るには、どんなプレーや行動が必要なのか。
丸田は、その術を知っている。