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慶応・丸田湊斗の魅力は“プリンスよりもギャップ”「本塁打をためていたのかな」「2回連続で“若き血”を」18歳のスゴい“自己プロデュース”力 

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間淳

間淳Jun Aida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2023/09/01 11:00

慶応・丸田湊斗の魅力は“プリンスよりもギャップ”「本塁打をためていたのかな」「2回連続で“若き血”を」18歳のスゴい“自己プロデュース”力<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

慶応優勝の立役者の1人、丸田湊斗。彼の言動からは球児の新たな形が見えてくる

 沖縄尚学の比嘉公也監督は試合前、「彼を塁に出すと、ほとんど1点を取られたようなもの」と丸田の足を警戒していた。丸田は沖縄尚学戦を迎える前の2試合で8打数4安打、2四死球と出塁率が6割に達していた。安打は内野安打2本を含む全て単打で、盗塁を3つ記録している。

一応、高校通算17本塁打を打っていますから

 数字だけではなく、丸田の足は強烈な印象を残した。初戦の北陸戦は初回にいきなり二盗を決め、捕手の悪送球も重なって一気に三塁へ進んだ。その後、4番打者のタイムリーで先制のホームを踏んでいる。5回には、失敗したもののエラーで出塁して二盗を試みた。3回戦の広陵戦も初回に四球で出塁し、ワイルドピッチで二塁に進んでから三盗を成功させて慶応の先制点につなげた。

 対戦前に見た2試合で沖縄尚学が丸田に抱いていたのは、出塁して足でかき回されるイメージだった。ところが、この試合で丸田が放った2安打は二塁打と三塁打。四球を嫌うバッテリーの心理を突いて、長打を狙っていた。試合後に笑顔で語る。

「自分の一番の役割は出塁ですが、長打が効果的になる場面もあります。一応、高校通算で17本の本塁打を打っていますから」

 丸田が放った二塁打を皮切りに、慶応は6回に一挙6点のビッグイニングをつくって試合をひっくり返した。イメージを逆手に取った丸田の打撃が比嘉監督の計算を狂わせ、大会屈指の好投手・東恩納蒼投手の攻略につながったのだ。

 バッテリーが丸田の足を警戒するほど、後ろを打つ2番・八木陽選手に安打が生まれる確率は上がる。相手の配球は盗塁を成功させないように直球が増え、ワンバウンド投球を避けるために低めの変化球の割合が低くなる。八木は「丸田が出塁することで楽に打席に立てる部分があります」と話す。

2回連続で「若き血」を流してもらうのが夢でした

 丸田は北陸と広陵の2試合で餌を撒き終わっていた。沖縄尚学との準々決勝以降、1つも盗塁をしていない。塁上で相手バッテリーの注意を引き付けて、八木が優位に打席に立つアシストに徹した。その結果、最初の2試合で安打が1本も出なかった八木は、準々決勝から決勝までの3試合で12打数8安打と打線を勢いづけた。

 チームを勝利に導くため、自分はどんな役割を果たせば良いのか――。丸田は自己プロデュースの能力が突出していた。

【次ページ】 シナリオを形にする確かな技術も備えていた

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