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古くて新しい「パワーあり過ぎ問題」…加藤大治郎、原田哲也が駆ったホンダNSR500も陥った速いエンジンの罠
posted2023/08/29 11:01
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
ロードレース世界選手権・日本GPの舞台となるモビリティリゾートもてぎの「コレクションホール」では、いま、ホンダのグランプリマシンが一挙公開されている。公式ホームページの案内には、「チャンピオンマシンだけではなく、記憶に残る名シーンを彩ってきた45台を特設会場にて展示。世界へ挑んだHondaのグランプリマシンたち、それぞれの軌跡をお楽しみください」と書かれている。展示期間は、7月21日に始まり、日本GPの決勝日の10月1日までとなっている。興味ある方は、ぜひ見に行ってほしいと思う。
この展示を先日、見ることができた。コレクションホールはグランプリ期間中に多くの関係者が訪れ、そして異口同音に「ホンダの歴史に圧倒された」と感激する場所でもある。通常展示でも十分に見応えあるものだが、今回の特別展示では、グランプリを駆け巡ったGPマシンが勢揃い。まさに、ホンダの栄光の歴史が詰まっていると言ってもいい。
それだけに、この数年のホンダの低迷は、ホンダファンにとっては辛く寂しいものだろう。もう何度も書いてきたが、ホンダは昨年、コンストラクターズポイントで6メーカー中最下位。今年も10戦を終えて5番手だが、1チーム体制のヤマハと並んで同ポイントである。チームポイントでは、ホンダのワークスチーム「レプソル・ホンダ」が、昨年最下位、今年も10戦を終えて最下位と、栄光のホンダの歴史の中で「どん底」状態になっている。
一向に解決しないリアのスピニング
その低迷を受けて、ヨーロッパのジャーナリストたちからは、「ホンダはパワーがない。だから、遅いのだろう」という声があがる。「いやいや、そうではなくて、ホンダはパワーを出し過ぎてバランスが狂っているからだ」と言っても、怪訝な顔をされるばかりである。
当初はホンダ陣営も何が悪いのかわかっていなかった。1番の問題はリアのスピニングで、そのため加速、最高速を得られなかった。その問題を解消するのに、本当に多くの時間を費やしてきたと思う。昨年は、モト2クラスの車体で最大勢力を誇るカレックスにスイングアームの製作を依頼し、今年はフレームの製作も依頼している。車体の剛性など、大きく変わっているのだが、その結果は、「多少の変化はあるものの大きな改善はなし」というもの。現在は、サーキットによって「ライダーの好み」でホンダオリジナルとカレックスを使い分けている状態だ。