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「選手もこれじゃダメだって気づきます」前日本代表HC・平井伯昌が語る“競泳ニッポンの窮状”「世界のトップを目指す“方法論”がない」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byNumber Web
posted2023/08/23 06:05
取材に応じる平井氏。東京五輪まで競泳日本代表のヘッドコーチを務めた平井氏は、これまでの経験と危機感から現状の問題点を明かす
2015年、当時の競泳委員長だった上野広治氏がその座から降りることになった。2012年のロンドン五輪で金が取れなかったとはいえメダル11個を獲得と大きな成功を収め、次なるターゲットのリオ五輪がもう1年後に迫っている重要な時期。客観的に見れば、降りるのではなく、降ろされたと思える人事だった。
「五輪前年にどうして強化の責任者を代える必要があるんだと思うでしょう。あのあたりから連盟の組織のあり方に疑問を感じるようになりました」
結局は権力争いなのかな
結局、当時は上野氏は強化本部長という役職に収まり、平井氏が競泳委員長、村松さやか氏(現常務理事)が副委員長となることで収束を見たものの、不信感は残った。
「僕はあくまでコーチでいようと思っていたし、連盟の組織に入るつもりもなかったけど、そういうゴタゴタがあって入らざるを得なくなった。でも、それで余計見えてきたこともありました。結局は権力争いなのかなと思いましたよ」
東京五輪のバブルが終わり、予算の減少に苦しんでいるのはどのスポーツ団体でも同じ。そこで何ができるのかがいま問われている。
選手に「こういうところを頑張ろう」と言えない
「目標を達成するために必要なサポートなりが揃っていれば、結果が出ない時に選手に『もう少しこういうところを頑張っていこう』と言えるんです。でも今はとても言えないでしょう。
東京オリンピックまでと条件が変わったことは重々承知しているけど、代替案を考えて何か他にできることはないのかと問いたい。世界のトップと戦うのに本当に今の体制でできますか? と水泳連盟や競泳委員会が自問自答した時に、YESと言える人は少ないんじゃないかな」