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高橋ヒロムとエル・デスペラードは「ライガーの時代」を超えられるのか? “新日ジュニアの2トップ”がFREEDOMSに参戦した“本当の意義”
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/08/18 17:08
FREEDOMSの横浜武道館大会に参戦したIWGPジュニアヘビー級王者の高橋ヒロム。エル・デスペラードとともに“ジュニアの熱”を他団体に広めている
タイトルマッチを制したり、大会を締め括ったりする時、高橋はこう叫ぶ。
「もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、みんなで! 楽しもうぜー!」
見ている人たちに向けての言葉だが、「もっと楽しむ」ためには、対戦相手にも自分と同じレベルに来てもらわなければならない。結果的に、高橋はリブレのラブコールを受諾した。
「東京ドームのメインで…」高橋ヒロムの“壮大な夢”
高橋は自身の夢を何度も口にしている。
「IWGPジュニアのベルトを巻き、ジュニアのままIWGPヘビーのベルトも巻く」
これだけならば自身の力だけで成し遂げられるが、夢には続きがある。
「ゴールデンタイムのテレビ中継で試合をする」
「東京ドームのメインイベントでIWGPジュニアヘビー級選手権を戦う」
これらは、相応の相手がいなければ実現できない。そして、新日本のジュニアだけでなく、プロレス界全体が盛り上がりを見せていなければ、やはり実現できない。
1990年代の新日本ジュニアの黄金期のみならず、『スーパーJカップ』でハヤブサやザ・グレート・サスケ、ワイルド・ペガサス(クリス・ベノワ)、ブラック・タイガー(エディ・ゲレロ)らが世界的なアイコンとなるきっかけを作り、空前の盛り上がりを生んだ「ライガーが作り上げた時代」を超えるというのは、1人で完結する話ではない。
だから高橋は、自団体のジュニアのレベルアップのため、というリブレの言葉にノーと言わなかったのだろう。
横浜で行われたリブレ・香取組との試合では、高橋が「ジュニアの頂点の遠さ」を感じさせる試合運びを見せた。
意気込むリブレは重たい攻撃を食らいながらも何度も「来いよ!」と言ったが、「自らが望んだ試合でそれは違うだろう」ということを、高橋はチョップ1発で感じさせていった。
最後はTIME BOMBではなくダイナマイト・プランジャーで決着。試合後、まだ向かってくる香取には強烈なチョップをプレゼントし、ひたすらに“差”を見せつけてリングを後にした。
「試合してても感じねえよ。何が『来いよ!』だよ。お前が来い」
格の違いを痛感させる言葉で改めて自分との距離を明確にしたIWGPジュニア王者は、リブレの夢を実現させるために尽力したFREEDOMSの佐々木貴代表に、彼らとの再戦の条件を伝えた。