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高橋ヒロムとエル・デスペラードは「ライガーの時代」を超えられるのか? “新日ジュニアの2トップ”がFREEDOMSに参戦した“本当の意義”
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/08/18 17:08
FREEDOMSの横浜武道館大会に参戦したIWGPジュニアヘビー級王者の高橋ヒロム。エル・デスペラードとともに“ジュニアの熱”を他団体に広めている
「あいつ、デスマッチ愛めちゃくちゃあったよ」
今や高橋と肩を並べる存在になったデスペラードは“デスマッチのカリスマ”葛西純とのタッグを再び結成し、竹田誠志、山下りなと激突した。
画鋲ボードに叩きつけられ、口に画鋲をパンパンに詰められた状態で張り手を食らい、マスクを裂かれた頭に大きなハサミを突き立てられ、自身が持ち込んだ空き缶ボードにも叩きつけられ……と存分にデスマッチを“満喫”した。もちろんやられるだけでなく、“デスマッチ・アマゾネス”山下の頭でパイプ椅子をくりぬいたり、自身に向けられていたフォークボードを裏返して竹田にカウンターを見舞ったりとアイテムを巧みに使い、最高峰のデスマッチ・ファイターたちと渡り合ってみせた。
ロコ・モノやピンチェ・ロコを葛西と2人で繰り出し、相手を抑えつつ“特等席”でパールハーバー・スプラッシュを見届けるなど、タッグとしての時間も存分に楽しんだ超刺激的な試合は、葛西が竹田を下して勝利。試合後、竹田は「エル・デスペラード……楽しいね、あいつ。デスマッチ愛めちゃくちゃあったよ」とならず者ルチャドールを評した。
それは、自らの好きなものを追い求め、自分が楽しむために行動するデスペラードがなぜ見る者をこれほど惹きつけてきたのか、ということと重なる言葉だった。
本当に好きなことを目一杯楽しんでいる様子は、見る者まで楽しい気持ちにさせる。加えて、本当に好きなことだからこそ心からのリスペクトが自然と漏れ伝わり、試合の質も自然と伴ってくる。
高橋は「みんなで楽しむ」。デスペラードは「自分が楽しむ」。しかし、デスペラードの試合も見るものを楽しくさせる。ならず者でありながら誰よりも筋が通っている、という不思議なバランスによって周囲を巻き込み、縁が生まれ、唯一無二の道が拓かれてきた。
高橋ヒロムとエル・デスペラードの道はそれぞれ異なる形で築かれてきたが、要所要所で重なり合う。まさに永遠の好敵手だ。
期せずして「自由人達の狂宴」に顔を揃えた2人の関係が再び繋がる時、ファンは最上級の「楽しさ」を味わうことになるのだろう。
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