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「私はスターダムを世界で一番だと思ってる!」赤いベルトの女王・中野たむの叫びが意味するもの…世界に開かれた“日本の女子プロレス”の現在地
posted2023/08/20 11:01
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
8月13日、エディオンアリーナ大阪で女子プロレス・スターダムの真夏のビッグマッチ『STARDOM×STARDOM 2023』が開催された。
大会の終盤3試合はシングル王座戦が担っていた。ジュリアvs.優宇のSTRONG女子王座戦、岩谷麻優vs.林下詩美のIWGP女子王座戦、そして中野たむvs.メーガン・ベーンの赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)戦だ。
大会前、タイトル戦に抱いた“ある違和感”
この日は赤と白の2大タイトルのうち白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)の試合は行われなかったが、STRONGとIWGPという新日本プロレスのタイトルが2つ並んだ。同日には東京・両国国技館で新日本の真夏の祭典『G1 CLIMAX 33』の決勝戦が行われていたが、女子に関しては大阪にタイトル戦が集中することになった。
大会前、対戦カードが並んでいるのを見た時、何か違和感があった。
おそらくそれは、STRONGとIWGPが国内の選手による対決で、赤いベルト戦が“対海外”という構図になっていたからだろう。
IWGP女子王座は2022年に創設された。新日本とスターダムの初の合同興行のメインイベントでKAIRIが初代王者になり、東京ドームのレッスルキングダム本戦を経てアメリカへ。新日本のサンノゼ大会のチケットは、同王座戦がKAIRIとメルセデス・モネの2人で行われることが判明すると早々に完売した。同大会でベルトはモネに渡り、新日本の春のビッグマッチ『SAKURA GENESIS 2023』での防衛を経て、スターダム史上最大の大会となった横浜アリーナで岩谷が奪取することになった。
そういった経緯を経て、IWGP女子のベルトには「ビッグマッチの中でも特別な大会で、前哨戦が関与しない一発勝負で争われる」という特殊なイメージがついていた。
一方、2023年にできたばかりのSTRONG女子王座は、アメリカを主な舞台とした「NJPW STRONG」のものであるため、基本的に「国外の選手が中心となって回っていくタイトル」と想像していた人も少なくないはずだ。
そして中野の持つ赤いベルトには、時間とともに積もり積もった情念(あるいは関係性)がタイトルマッチで爆発する……というイメージがあった。
それらを踏まえたうえで言うのなら、優宇の後ろに大江戸隊の影までちらつくことになったSTRONG女子王座戦は、スターダムのタイトル、ありていに言えば白いベルト戦のようでもあった。あるいは、IWGP女子王座戦と赤いベルト戦の“当事者”が入れ替わっているようでもあった。