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甲子園の風BACK NUMBER
甲子園で賛否…大人に不評、高校生に人気『盛り上がりが足りない』は誰のための応援? アルプスが“フェス化”する今「コロナ前と応援が変わった」
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2023/08/19 06:00
今夏の甲子園、出場全49校のうち実に32校が応援に取り入れている『盛り上がりが足りない』。一部から不評の声も挙がるが……
「『盛り上がりが足りない』は、応援団を鼓舞する行為として見ればありかなあと思いますが、吹奏楽部の顧問としては、『何だか勝手にやってるな』と思いますね。やっぱりアルプスの応援には音があってほしい。まあ、グラウンドは試合でも、アルプスはある意味祭りのノリですから」
教員歴40年以上で、何度も甲子園に行っている同氏だが、「アルプスは祭りのノリ」というのは昔からなのだろうか。
「アルプススタンドには、多くの同窓生がやってきます。同学年の同窓会を開くことはあっても、異なる学年のOBたちが集まるということはなかなかないですよね。でも、アルプスにはそれがあります。以前も、私が新任の頃に担当していた卒業生が訪ねてきました。また、野球部の親御さんが応援バスを手配し、地域住民や親戚を引き連れてくることもあります」
アルプス応援の「フェス化」
甲子園に出場するということは、卒業生や関係者にとっても一大イベントなのだ。そして、こうも続ける。
「現役生は、身近な存在である野球部の活躍に、自分が関係できるという満足感が得られます。大人はアルコールを持ち込むこともあるでしょう。これらのことから、『応援』というひとつのことに向かってみんなが一丸となり、『気分が高揚する』というのは『祭り』といえると思いますが、盆踊りのような祭りではなく、たとえていうなら『フジロックフェスティバル』のようなノリや興奮だと思います」
2016年頃、「アゲアゲホイホイ」が大流行したあたりから、祭りやフェス化が加速したのだろうか。
「元々素地はあったので、変異しながら加速したんじゃないでしょうか。ただ、『アゲアゲホイホイ』と『盛り上がりが足りない』は、本質的には異なると思います。前者は完全に応援団の指揮下にありますが、『盛り上がりが足りない』は指揮下にありません。私としては、『はなから盛り上がっているじゃないか。何を今さら』『なんだかなあ、ちょっと違うよなあ……』という感覚です。また、『盛り上がりが足りない』というコール自体、そもそも応援になっているのか? とも感じています。グラウンドの選手が、応援団に『もっと盛り上がって俺たちを後押ししてくれ!』と言っているのならともかく、彼らからそんなこと頼まれているわけではありませんし。下品とまではいかなくても、品がないなと思うのはたしかですね」
コロナ禍で「途切れた」影響?
吹奏楽の演奏や、声出し応援が禁止されていたコロナ禍の期間があり、「コロナ前とは応援の質が異なっているように感じている」ともいう。