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甲子園の風BACK NUMBER
甲子園で賛否…大人に不評、高校生に人気『盛り上がりが足りない』は誰のための応援? アルプスが“フェス化”する今「コロナ前と応援が変わった」
posted2023/08/19 06:00
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph by
Yukiko Umetsu
今年の春あたりから地方大会などで増え始めた、大流行中の応援「盛り上がりが足りない」。「も! 盛り! 盛りあ! 盛り上がりが足りない!」とコールする応援で、西東京大会で初めて聞いた時は、最初何と言っているのかわからなかった。「変わったコールだな」「誰に向かって言っているんだろう」くらいに思っていたが、瞬く間にスタンドを席巻。開催中の甲子園で、全49校の応援を取材したところ、実に32校もの学校が取り入れており、毎日どこかの応援席からこのコールが響いている。
採用・不採用の「理由」
SNSやYouTubeでさまざまな応援が簡単にコピー出来る時代だけに、正確な起源ははっきりしないが、茨城の明秀日立高校サッカー部の応援がTikTokで拡散され、全国に広まったのは間違いない。アルプススタンドで取材した野球部に「この応援を何で知ったのか」と聞くと、100%TikTok。「明秀日立サッカー部のを見た」という声がもっとも多く、採用・不採用理由について聞いたところ、以下のような回答だった。
<採用理由>
「盛り上がるから」
「楽しいから」
「一体感が生まれる」
「みんなやっているので、自分たちもやりたい」
「やる予定はなかったけど、相手チームがやったので、次の回でうちもやる」
<不採用理由>
「盛り上がりが足りているから」
「かっこいいと思わないから」
「みんなやっているから、自分たちはやらない」
「県大会でこの応援をやって、負けた学校が多かったから」
「監督がこの応援を好きじゃないので」
「県大会ではやったけど、甲子園では吹奏楽部が演奏してくれる曲がたくさんあるから」
「野球部だけで声を出す応援が他にもあるのでやらない」
「先生にやるなと言われたから。でも本当はやりたい」
県大会では、吹奏楽部の応援が来ないという学校も多く、声だけでできる「盛り上がりが足りない」は、思い立ったら野球部だけですぐできることもあり、急速に広まったのだろう。
広まりが「異例スピード」
現在、多くの学校が取り入れている「アゲアゲホイホイ」(通称「アゲホイ」)は、『サンバ・デ・ジャネイロ』という楽曲に「エッサエッサー!」(または「ハイヤハイヤハイ!」」「アゲアゲホイホイ」「もっともっとー!」といったコールをつけた、兵庫県の報徳学園発祥の応援。甲子園で流行り始めたのが2016年夏のことで、同年は4校だったが、翌夏には24校に急拡大した。
ところが今回の「盛り上がりが足りない」は、いきなり32校もの学校が採用。「アゲアゲホイホイ」は基本的に演奏がないと成り立たないため、吹奏楽部がいないと難しいが、「盛り上がり〜」は声だけで出来るため、「アゲホイ」以上に多くの学校に広まったのだろう。