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甲子園の風BACK NUMBER
甲子園で賛否…大人に不評、高校生に人気『盛り上がりが足りない』は誰のための応援? アルプスが“フェス化”する今「コロナ前と応援が変わった」
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2023/08/19 06:00
今夏の甲子園、出場全49校のうち実に32校が応援に取り入れている『盛り上がりが足りない』。一部から不評の声も挙がるが……
2つの応援に共通しているのは、「一体感が生まれる」「めっちゃ楽しい!」「やりたい!」という声だ。たしかに、やっているほうは盛り上がるし、高校生たちはみなこの応援が大好きだ。しかし、顔をしかめる大人はとても多い。
「居酒屋のコールみたいだ…」大人から不評
「品がない」
「居酒屋のコールみたいだ」
「応援はノリでやるものじゃない」
といった具合に、これらの応援に否定的な声も少なくない。ブラバン応援取材を続ける筆者も、「アゲアゲホイホイ」が出始めた頃は「なんだこの応援は」と思っていた。
しかし、いろんな学校の応援席を見ていて、次第に考え方が変わっていった。
応援するのは大人ではなく、彼らなのだ。全校応援のある学校も多いが、野球に興味のない生徒も大勢いる。
ある女子高生の声
今夏の神奈川県大会、全校応援のとある学校の応援席に、カラーリングした明るい髪色に、カラコンとピアスをした女子高生数名の姿があった。校則が緩いのか夏休みだからかはわからないが、制服を着ていたので高校生とわかった。
「あちー!」「マジ帰りたい」「何で野球部の応援に来なきゃいけないんだよ」と言い続けていた彼女たちだったが、試合が始まり、みんなで大声を出して応援するという経験が初めてだったのだろう。スタンドが一体となる高揚感に包まれたからか、「大きな声で!」「○○高!」と、本来は応援団が言う「大きな声で!」というコール部分まで叫び、試合前とは別人のように「めっちゃ楽しい!」「野球応援おもしろいじゃん!」といきいきしていて、一部始終を見ていた私まで「ああ、よかった……」と、なぜかホッとした。
コロナ禍の間、声出し応援や吹奏楽の演奏が禁止されていたこともあり、本格的な応援をするのは初めてという生徒がほとんど。そんな彼らが「楽しい」と思える応援が、1つや2つあってもいいのではないだろうか。こういった経験が思い出になっていくのだろうし、野球に興味を持つきっかけになるかもしれない。
ある吹奏楽部顧問「ありかなあと思いますが…」
応援を率いる、とある甲子園常連校の吹奏楽部顧問にも話を聞いた。