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「あなたが甲子園に出りゃええ」広陵・中井哲之監督からの一言で、おかやま山陽監督は甲子園を本気で目指した…「甲子園は世界に野球を広めるための手段」
text by
堤尚彦Naohiko Tsutsumi
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/17 06:02
今夏の甲子園に出場している広陵とおかやま山陽。広陵・中井哲之監督から言われた一言が、おかやま山陽・堤尚彦監督にとって大きな転機となった
それが中井監督からの言葉で、「自分が甲子園に出て、発言の影響力が増せば、話を聞いてくれる人が増えてくれるかもしれない」と思えるようになった。初めて自分の夢を叶える手段として「甲子園出場」が必要だと気づけたのだ。
3つ目の出来事
理事長から命じられた「地域から愛される野球部」の具体例を目の当たりにし、また甲子園に行く意味も自分なりに見出した。けれども、選手たちの問題行動は簡単に収まらないし、簡単に勝つことも難しい。悪戦苦闘していたある日、私のやる気に火を付ける、ある“失言”を耳にする。結果的にこれが3つ目のきっかけとなる出来事となった。
おかやま山陽の練習試合を見ていた、ある中学硬式クラブの指導者が「おかやま山陽になら自分たちでも勝てそうだな」と言っているのを偶然耳にしたのだ。悪意を持った言い方ではなく、本音がぽろっと飛び出たような発言だったが、これがとにかく悔しかった。
中学時代に「兄に勝ちたい」一心から突然学習塾に通って猛勉強をし始めたように、私は元々反骨心を糧にして突き進んできた人間だ。この一言に奮い立ち、「今後10年以内に達成する目標」を三つに定め、部員たちに宣言した。
(1) プロ野球選手を輩出する
(2) 甲子園出場
(3) 部員100人超え。その人数でも全員が練習できる環境を整える
<「アフリカ戦記」編へ続く>
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