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藤井聡太17歳「盤上の物語は不変」なぜ“藤井将棋”は心を打つのか…最年少名人で「温故知新」と記した“将棋愛と冒険心”〈21歳に〉
posted2023/07/19 11:05
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Keiji Ishikawa
<名言1>
将棋界の盤上の物語は不変のもの。その価値を自分自身も伝えられたらと思います。
(藤井聡太/Number1010号 2020年9月3日発売)
https://number.bunshun.jp/articles/-/857842
◇解説◇
《2020年の藤井聡太》
・棋聖戦3勝1敗で史上最年少タイトル獲得(17歳11カ月)
・王位戦4連勝で史上最年少タイトル二冠、八段昇段(18歳1カ月)
・竜王戦ランキング戦4期連続優勝(史上初)
・銀河戦初優勝
2016年、14歳での四段昇段に始まった藤井聡太の将棋を巡る旅は、年を追うごとに進化している。
デビュー29連勝を筆頭に数々の最年少記録を作ってきた中で、日本全国が注目することになったのは2020年の初タイトル獲得(棋聖)だった。新型コロナウイルス禍で閉塞感があった中で、王位奪取を含む藤井の戦いぶりに魅了された人々は多いだろう。まさに「盤上の物語」の価値を鮮やかに照らしたといえる。
冒頭の言葉に、藤井は「今の時代においても」と前置きして話している。そこには2010年代の将棋界を語るうえで欠かせない「電王戦」という対局があった。当時はまだ“人間とAI、どちらが強いのか”という観点で注目される中で、棋士がAIソフトに負けたことが大々的に取り上げられた。その一方で、AI研究を取り入れることで棋力を伸ばした20~30代棋士の台頭によって、将棋界が活性化されていった。
「数年前、棋士と将棋ソフトの対局が大きな話題になりましたが、今は対決ではなく共存の時代に入りました。自分自身、プレーヤーとして(AIを研究に用いることで)成長できる可能性があると思っていますし、観戦の際の楽しみ(評価値の変動)のひとつになればいいなと思います」
2020年の藤井は、その潮流を17歳にして見事なまでに言語化していた。
どこまでいっても変わらず、強くなるために
<名言2>
どこまでいっても変わらず、強くなるために努力することが大切です。
(藤井聡太/Number1018号 2021年1月7日発売)
◇解説◇
《2021年の藤井聡太》
・朝日杯将棋オープンで2年ぶり3度目の優勝
・順位戦B級2組で全勝して昇級/順位戦22連勝
・竜王戦史上初の5期連続ランキング戦優勝
・棋聖戦3勝、王位戦4勝1敗で防衛
・叡王戦3勝2敗で奪取(19歳1カ月で最年少三冠)
・竜王戦4勝0敗で奪取、序列1位に(19歳3カ月で最年少四冠)
藤井の疾走は2021年も続く……どころか、その加速度を増していった。上記した出来事も、どれか1つの出来事だけでも「将棋界にニュースター現る」と報じられるレベルの快挙なのに、である。