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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ベストナイン2回の名内野手は引退後なぜ大学院に通い、母校・法大野球部へ?「野球だけしていれば世渡りが…の時代では」〈大島公一に聞く〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2023/07/09 11:01
現在の大島助監督
野球一筋でやってきたエリート野球人にとって「大学院での学び」は、視野を大きく広げるうえで絶大な効果があったのだろう。大島氏もまた、その学びを実感する1人である。
〈大学院には東京の実家から通いました。やはり人間も50歳近くになると、素直に人の話を聞くことができるようになります(笑)。こんなに授業を真剣に聞いたのは初めてでした。
特にカウンセリングの坂入洋右先生(筑波大学体育系教授)の自律訓練法や身体技法など、心身のコンディションのセルフコントロールなどは本当に感銘を受けました。若い院生の皆さんも温かくしてくれましたし、助けられましたね〉
大学院修士課程を修了した大島氏は解説者の傍ら、大阪の企業が新たに立ち上げる社会人野球チームの立ち上げに参画する。
〈僕としては「監督として5年はチームを指導したい」との思いがあったのですが、経営上の問題で野球部の存続は難しいとなった。そのタイミングで、母校法政大学の助監督に、という声がかかって、2021年1月1日付で法政大学、そして日本生命野球部の先輩でもある加藤重雄監督と同時に就任しました〉
試合に出ない部員も充実した学生生活を送れるように
大学野球も、昭和の時代とは大きく様変わりしている。大島氏はその変化の中で、名門大学野球部をどのように指導しているのだろうか。
〈選手諸君よりも少しだけ長く生きていますので。技術的なこともときには話はしますが、それ以上にメンタル面とか、生活面のアドバイスをすることが多いですね。法政大学野球部にいたというプライドを育ててもらいたいですね。
それから、練習をどのように組んでいくか、選手の扱いをどうシステム化するかを考えています。
昔の大学野球部は、レギュラーばかりに力を注いで、他の人はどうでもいいという指導でしたが、今は試合に出ない部員も、充実した学生生活を送るにはどうすればいいかは重要な問題です。大学には、データ担当のアナライザーや学生コーチもたくさんいますが、現時点では彼らの指導が十分にできていないな、という点がジレンマになっています。
東京六大学ですから、やはり勝利を目指さないといけない。それなりの選手はいるのですが、人選も難しいところですね〉
「野球だけしていれば世渡りができる」時代ではない
プロ野球生活が長い大島氏だが、プロと大学野球の違いはどういうところか――そこを深掘りして聞いてみると、こう返ってきた。