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遠藤航「W杯優勝を」“新キャプテン演説”に三笘薫、鎌田大地、堂安律が…1対1で聞いた“舞台ウラの最適解”「その上で考えたのは」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/06/18 11:00
エルサルバドル戦は出場しなかった遠藤航だが、試合後に新キャプテンとして1対1で話を聞いた記者に興味深い言葉を残した
「W杯優勝も、10番(を背負うという目標)のことも、自分は最近になって言い始めたわけではないので。自分が口にしたことを、やっとみなさんが期待してくれるような立場になってきた。やりがいを感じていますし、同時に責任感も増えている。それは覚悟の上です」(堂安律)
W杯ドイツ戦、遠藤のデュエルが象徴するもの
世の中には「言葉で強く引っ張る者こそがリーダーにふさわしい」という考え方の人もいるかもしれない。ただ、そんな考え方はもう古いし、遠藤はそういうタイプではない。
その代わり、彼はプレーでチームにメッセージを送れる。マウスピースをつけ、恐れることなくボールを奪い、前に運ぼうとする。球際の争いの強さも、過去にブンデスリーガで2度のデュエル王を取ったことで証明済だ。
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何より遠藤は、日本サッカーの特徴をよく知らない人も大勢いたスタジアムの雰囲気を変えた実績がある。
カタールW杯のドイツ戦で魅せた「遠藤の5回」である。
72分のこと。わずか10秒の間に5回のデュエルを見せて、最後は相手のファールを誘ったシーンがあった。すると、ゴールシーンでもないのに、スタンドが一気に沸いた。一連のプレーが、ハリファ国際スタジアムの空気を変えたのだ。あそこからは日本のファンだけではなく、中立のファンからも、日本代表のプレーを称える歓声や拍手が大きくなっていった。そして、日本代表はドイツ相手に逆転劇を成しとげた。
そんな遠藤は今シーズンの最後、自身が示してきたリーダーシップが間違いではなかったと感じられた瞬間に巡り合っている。
「シュツットガルトではそこまで多く話すタイプではないですけど、それでも他の選手たちにそれが少しずつ伝播していっている感覚が個人的にはありました。そのあたりが、(入れ替え戦で連勝しての1部残留という)結果につながったのかなとも思うんですよね」
遠藤とは、進化するキャプテンである
ただ、興味深いのは、そこで終わらないところである。
遠藤は自分の築き上げたキャプテン像に満足感を覚えたり、完成形を見出だしたりもしない。
「(シュツットガルトでの)キャプテン像と、日本代表でのキャプテン像というのは変わってくると個人的には思っているので。シュツットガルトにいるときと同じことをやろうとは思っていないというか。日本語を使えるので、代表では、より(綿密に)コミュニケーションをとれるだろうし。このチームには、このチームのキャプテンとしてのやり方が多分あると思う。そこを少しずつ探りながら、やれればいいなと思っています」
日本代表のキャプテンとしての最適解を求めていく戦いはむしろ、これから始まる。日本代表チームが進化するように、遠藤の描く理想のキャプテン像もまた、進化していくのだ。
遠藤のキャプテン像とは何か?
言葉ではなく、プレーで示す。要求するのではなく、聞き耳を立てる。引っ張るのではなく、まとめる。
特徴ならばいくつも挙げられる。ただ、一言で表現するならば……こう言っても決して、大げさではないはずだ。
遠藤とは、進化するキャプテンなのである。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。