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「てめー、ふざけるな!」怒声に疑問…静岡の公立進学校監督が語る“野球界の常識は世間の非常識”「イチローさんの指導は丁寧な言葉で」

posted2023/06/18 11:02

 
「てめー、ふざけるな!」怒声に疑問…静岡の公立進学校監督が語る“野球界の常識は世間の非常識”「イチローさんの指導は丁寧な言葉で」<Number Web> photograph by Jun Aida

県立富士高校の稲木恵介監督(44歳/右)

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間淳

間淳Jun Aida

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Jun Aida

イチロー氏の直接指導を受けた高校球児は、どのような意識改革をしているのか。指導後の取り組みなどについて、県立富士高校の指導者や選手たちに聞いた《全2回の2回目/前編からつづく》

 元メジャーリーガー、イチロー氏も興味を持った活動は進化している。静岡県富士市にある富士高校の野球部が、高校野球の新たな役割を担っている。

 昨年4月、富士高校の野球部監督に就任した稲木恵介監督(44)は「富士高版の野球振興」を打ち出した。前任の三島南高校で園児を対象とした野球体験会を始めたのが9年前。競技人口の減少に危機感を抱き、野球部として地域貢献しようと考えた。この取り組みが評価されて、2021年に21世紀枠で選抜高校野球大会に出場した。

高校から地域を引っ張っていく存在に

 指揮するチームが変わっても、稲木監督は地域貢献の活動を続けると決めた。競技人口が減少している現状や、富士・富士宮地区では野球振興の取り組みをしている高校がないことを選手たちに伝えた。

「富士高校は地域の優秀な生徒を集めているとうたっている学校です。地域を引っ張っていく存在にならなければいけません。野球部としてやるべきことがあるのではないか? というところからスタートしました」

 まず、稲木監督は富士高校から一番近い保育園を訪問した。三島南時代の活動内容を説明し、賛同を得た。日程調整して富士高校で初めて園児対象の野球体験会を開催したのは、監督就任からわずか2カ月後だった。高校野球シーズンを終えた10月にも2度、体験会を開いた。稲木監督は「園児の流れをつかんだ」と手応えをつかみ、次の一手を打った。

 冬休みに入った直後の昨年12月26日、小学生の野球体験会を開いた。参加者に持ち物として伝えたのは野球道具と冬休みの宿題。文武両道を掲げる富士高校の選手たちは、野球体験会の前に勉強を教えた。稲木監督は言う。

「野球を職業にできる人は、ごくわずかです。特に小学生は、野球と勉強のバランスが大切だと思います。富士高校の野球部に入って野球も勉強も頑張りたい子どもを増やすことは、地域にとって大事だと感じています」

園児や小学生の笑顔を見ると、上手くいったと

 野球体験会を形だけで終わらせず、より内容の濃いものにするため、メニューや時間配分は選手たちが考えている。

 園児相手では計画通りにいかないからこそ、選手たちにも学びがある。園児がバットにボールを当てるのは難しい。そこで、先端にボールをつけた紐を選手が持って、園児が打ちやすい場所に紐を垂らす。それでも当たらない場合は、園児のスイング軌道に合わせて打つ瞬間に紐を微調整。バッティングの楽しさを体感してもらう。上手くいった時は園児を盛り上げ、ハイタッチで距離を縮める時もある。

【次ページ】 野球振興活動は、イチロー氏の目にも留まった

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