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松木玖生のPK失敗よりも…「後半に落ちるチームはW杯にいない」U-20日本代表がコロンビアに突きつけられた“試合の機微と強度の欠如”
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byHector Vivas - FIFA/Getty Images
posted2023/05/26 11:03
プエルタとデュエルする松木玖生。コロンビアの個人能力の前に屈したU-20日本代表は、GS最終戦でどんな戦いを見せるか
16分には右サイドバックの高井幸大(川崎フロンターレ)が右サイドを突破してクロス。ファーサイドで待つ松木に届く寸前で相手DFにクリアされてしまったが、決定機を作り出すことに成功した。
29分にはチェイス・アンリ(シュツットガルト)の縦パスを収めた熊田直紀(FC東京)がスルーパスを繰り出し、北野のシュートからコーナーキックを獲得する。このセットプレーを鮮やかに先制点に結びつけてみせるのだ。
福井のショートコーナーから北野のヒール、福井のマイナスのクロスから山根が蹴り込んだ一連のプレーはトレーニングの賜物で、「自分たちが狙っていたとおり」と福井も手応えを滲ませた。
後半の失速、ピッチで何が起きていた?
それだけに残念だったのが、後半の失速である。
ギアを上げてきたコロンビアの激しいフィジカルコンタクトとスピードに飲み込まれ、53分、59分と立て続けに失点を喫してしまう。
1失点目の場面では、ドリブルで仕掛けてきた相手の左ウイングに高井がアプローチした瞬間、裏に抜けた相手の左サイドバックにパスを通され、右サイドを攻略された。
2失点目の場面でも、スローインから高井と山根の間を割られ、またしても右サイドから侵入を許してしまった。
それ以外にも、センターバックが前のスペースを埋めに行った瞬間、相手のウイングがその背後に走り込むなど、コロンビアは南米のチームらしくスピードに乗ったときの技術が確かで、裏の取り方がうまかった。
また、1失点目は北野が相手の右サイドバックに競り負けたところが起点になっている。左サイドバックの松田隼風(水戸ホーリーホック)も対面の右ウイングの突破に手を焼かされるなど、デュエルでも遅れをとった。
先制点を奪った後、もう1回ギアを上げられるか
後半に入って主導権を完全に譲ってしまう様子は、セネガルとの初戦に通じるものがあった。
なぜ、後半に入ってギアが落ちてしまうのか――。
「両試合とも先に点を取ったので、その1点を大事にしたくなる気持ちがあるのかなと思います。もっと思い切りやってほしいし、もっともっとできる選手たちなので、その辺は自分のマネジメントで選手の力を解放してあげたい」
冨樫剛一監督はそう分析し、自身に矢印を向けた。ワールドカップという大舞台だけに、そうした守りの心理が働くのも仕方のない面がある。
一方で、コロンビア戦に関しては、試合巧者の相手が勝負どころで出力を上げてきた面もある。同点に追いつかれ、浮き足立つ日本に対してコロンビアは、ここぞとばかりに畳み掛けてきた。
冨樫監督の言うところの、試合の機微――。ゲームの流れを読む力、90分におけるメリハリは、日本のチーム全般に欠けているものだ。
また、普段の環境以上の強度に晒されているため、日本の選手たちの消耗が想像以上に激しい面もあるだろう。これは一朝一夕では解決できない問題で、今大会においてはチームとしての戦い方によってカバーしていくしかない。