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ソダシvsスターズオンアースは競馬史に残るレースとなるか?「ウオッカとダイワスカーレット」以来の“名牝ライバル誕生”を期待してしまう理由 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2023/05/13 17:01

ソダシvsスターズオンアースは競馬史に残るレースとなるか?「ウオッカとダイワスカーレット」以来の“名牝ライバル誕生”を期待してしまう理由<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

昨年のヴィクトリアマイルを制したソダシと、2冠馬牝馬スターズオンアースの初対決に注目だ

 ウオッカは牝馬でありながらダービーを制し、引退まで当時の最多タイ記録だったGI7勝を挙げるなど華々しいキャリアを送った。が、3歳時の宝塚記念で初めて連対を外す8着に敗れたほか、前述したように同年の有馬記念で11着に大敗するなど、負けるときはあっさり負けた。勝つときは恐ろしく強く、負けるときは惜敗ではなく惨敗、というあたりは、1991年のクラシック二冠と92年のジャパンカップ、93年の有馬記念を制したトウカイテイオーに通じるものがある。

 対するダイワスカーレットは、通算12戦8勝、2着4回と、キャリアで一度も連対を外さなかった。

 危なっかしさのあるウオッカと、憎らしいほど安定した強さのあるスカーレット。黒鹿毛で、下に行くほど細くなる流星が目立つウオッカと、栗毛で、幅の広い流星のあるスカーレット。キャリアで12回も上がり最速の末脚を見せたウオッカと、先行して一度も上がり最速の脚を使わず押し切ったスカーレット。

 2頭の女王は、かくも対照的だった。

 また、ウオッカを管理する角居は、調教助手時代、松田国英厩舎に所属していた。つまり、角居は松田の弟子だったのだ。そしてもうひとつ。ウオッカの父タニノギムレットを管理していたのは、ほかならぬ松田だった。松田は、自厩舎のスタッフを鼓舞するため、対外的にはウオッカをライバル視する発言を繰り返していたが、厩舎内の居室にウオッカの写真を飾るなど、実は親心を持って見守っていたのだ。

 そうしたバックグラウンドも含めて、この名牝対決は面白かった。

ソダシvsスターズの初対決が見逃せない理由

 ソダシとスターズオンアースのどちらがウオッカで、どちらがダイワスカーレットのイメージに重なるかというと、やはりソダシがウオッカで、スターズオンアースがダイワスカーレットだろう。ソダシは14戦7勝、2着1回、3着2回と安定した走りを見せる一方で、2桁着順も2度経験している。スターズオンアースは9戦3勝、2着4回、3着2回と、一度も馬券圏内を外していない。スターズとスカーレットは社台ファーム生産という点でも共通している。

 なお、ウオッカは2008年のヴィクトリアマイルで2着となり、翌09年には7馬身差で圧勝している。

 見た目もレースぶりも華やかで、つねに衆目を集める女王がソダシとウオッカ。安定した走りで、崩れない強さを見せる女王がスターズオンアースとダイワスカーレット。と書くと、後者のビジュアルが地味であるかのような印象を与えるかもしれないが、スターズオンアースの美人度は、見てのとおり、とてつもなく高い。流星の入り方はどことなくウオッカに似ている。そしてスカーレットは、特に厩舎で見せた素顔は、これがあの誇り高き女王かと思うほど可愛らしかった。

 ソダシとスターズオンアースは距離適性が異なるので、今後また顔を合わせるチャンスは少ないと思われる。それだけに、この初対決は見逃せない。

 スタニングローズやナミュール、ソングラインなど、ほかにも強い馬がいるなか、これら「二強」が、ウオッカとダイワスカーレットで決着した天皇賞・秋のような、競馬史に残る名牝対決を見せてくれるか。

 名勝負の予感を胸に、ゲートが開くのを待ちたい。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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