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ソダシvsスターズオンアースは競馬史に残るレースとなるか?「ウオッカとダイワスカーレット」以来の“名牝ライバル誕生”を期待してしまう理由
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/05/13 17:01
昨年のヴィクトリアマイルを制したソダシと、2冠馬牝馬スターズオンアースの初対決に注目だ
ウオッカとダイワスカーレットの初対決は、2007年のチューリップ賞だった。単勝1.4倍の圧倒的支持を得たウオッカが、最後の直線、持ったままで逃げるダイワスカーレットに並びかけ、ノーステッキで完勝。首差の2着はスカーレット。2頭の後ろは6馬身もちぎられていた。つづく桜花賞ではスカーレットが勝ち、ウオッカは2着に敗れた。しかし、ウオッカは次走のダービーを牝馬として64年ぶりに優勝し、喝采を浴びた。
一方のスカーレットは、熱発のためオークスを回避し、秋に備えた。
3度目の直接対決は秋華賞。先行したスカーレットが押し切り、ウオッカは追い込み及ばず3着だった。
4度目の直接対決は同年の有馬記念。スカーレットは2着、ウオッカは11着。
2008年天皇賞・秋での歴史に残る名勝負
最後の5度目の直接対決は圧巻だった。舞台は2008年の天皇賞・秋。安藤勝己のダイワスカーレットが抑え切れないほどの手応えでハナを切った。1000m通過が58秒7という淀みない流れになり、スカーレットが先頭のまま直線へ。安藤がラスト400m地点で後ろを確認してゴーサインを出した。3馬身ほど後ろの外から武豊のウオッカが猛然と脚を伸ばす。内にディープスカイを引き連れたウオッカが少しずつ差を詰める。スカーレットは驚異的な二の脚を繰り出し、簡単には抜かせない。ゴールまで残り2完歩のところでも僅かに内のスカーレットが出ていた。最後の1完歩で外のウオッカが並びかけ、ゴールを切った。1分57秒2のレコード決着だった。
内のスカーレットか、外のウオッカか。肉眼では判別できなかった。
場内にリプレイ映像が流れるたびに、スタンドが沸いた。
ダイワスカーレットを管理する松田国英も、ウオッカを管理する角居勝彦も、近くにいたほかの調教師に「おめでとう」と言われた。
勝ち負けは別として、松田は初めての感動に全身が震えるのを感じていた。角居は、この一戦が歴史的名勝負になったと思い、同時に、あの展開で差し返してくるダイワスカーレットの恐ろしさを感じていた。
13分におよんだ、長い写真判定の結果が出た。
鼻差で、外のウオッカが勝っていた。着差は僅か2cmだった。
なぜウオッカとスカーレットの物語は盛り上がったのか?
ウオッカとダイワスカーレットの名牝対決は、なぜこれほど熱く盛り上がったのか。
2頭それぞれが競馬史に残る強さを誇る名牝だったことが一番だろうが、個性の違いが明らかだったことも面白さを際立てた。