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駅伝ファンもビックリ…なぜ高校駅伝の名門校は“坊主頭をやめた”? 中学生が不安そうに「やっぱり坊主強制ですよね?」佐久長聖高監督が語るウラ側 

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山崎ダイ

山崎ダイDai Yamazaki

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/05/11 17:19

駅伝ファンもビックリ…なぜ高校駅伝の名門校は“坊主頭をやめた”? 中学生が不安そうに「やっぱり坊主強制ですよね?」佐久長聖高監督が語るウラ側<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2008年に全国高校駅伝で初優勝した佐久長聖。アンカーは坊主頭の大迫傑だった(写真)。佐久長聖は同大会に長野県代表として1998年から25大会連続で出場している

「『高校時代の環境から大学に入って急にスマホを使いだしたことで、すごく依存している感じがある』という話を耳にしたんです。加えて、いまや中学生はもちろん小学生でも携帯を持っている時代です。これからの時代を考えた時に、ただ持つことを禁止して『このまま先に進んでいいのかな?』という疑問がわいたのが大きかったです」

 高見澤自身が学校で「情報」の授業を受け持っているということもあり、スマホを持たせたうえで、その危険性やモラルを教えるスタイルに切り替えたのだという。

「登校している時は寮に預けていますし、夜も就寝前には事務室に預けていますがそれ以外の使用はフリーですね。休みの日の練習後とかはずっと使える時間です」

“アイドル化”する高校生ランナー

 そんな中で試行錯誤しているのがSNSとの付き合い方だ。

「現状、SNSでの発信は禁止にしています。閲覧は禁止しようがないですけど『SNS上にはいろいろ事実ではない情報も流れているからね』という話はしています。一方で、発信するということになると、まだまだ責任とれる年代ではないですから。チームで動いている以上、安易に情報を流してしまうリスクもある。もちろん何かを隠しているつもりはないですが、例えば戦術上の大事な情報を流してしまう危険性もある。そういった観点から禁止しています」

 特に近年は箱根駅伝の人気高騰に伴い、青田買い的に高校生ランナーたちもある種の“アイドル化”が進んでいる。全国的な活躍を見せれば選手個人にファンがつき、その発言や一挙手一投足が注目をあつめる時代になってきている。

 それだけに高見澤は「何かを発信したときには、本人の意図しないところで周りを傷つけたり、なにより自分に返って来るリスクもあるということを自覚してほしい」と選手たちには伝えているという。

 ここでも高見澤が繰り返したのは、やはり「自覚と責任」という言葉だ。

「それこそ吉岡(大翔、5000mの現高校記録保持者。4月から順大)や永原とも話はするんですけど、SNSだけでなくレース会場でも『サインしてください』とか『写真を撮ってください』と言って下さるファンの方もたくさんいるんです。それをすること自体がダメなのではなくて、その時々で『何を優先しなきゃいけないのかを自分で考えなさい』というのは再三、再四伝えています」

 例えばレース前やレース後、ウォーミングアップやクールダウンをしなければならないタイミングで、ファンやメディアに選手が声をかけられるケースもある。

 もちろんファンやメディアを大切にするのは重要なことだ。だが、第一として彼らは陸上競技者なのだ。競技者として、やるべきことに優先順位をつけなければいけないと高見澤は言う。

「状況を考えて『試合前なのでスミマセン』『ダウン行くんでちょっと待ってください』と、言うべき時はしっかり言わないといけない。もちろんまだ高校生ですし、戸惑うこともあるでしょう。大人に声をかけられて断りにくいこともあると思います。でも、それはちゃんと競技者の自覚と責任を持って伝えないといけない」

「高校生がサングラスなんかして…」という人もいる

 一方で、上記のようにここまで駅伝人気が過熱する現状では、高校生ながらにファンへの対応も無視できない時代にもなってきている。かつてのように「スポーツ選手は競技にだけ集中していればいい」というわけにはいかないのも事実だ。

【次ページ】 「高校生がサングラスなんかして…」という人もいる

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