「結局、髪型ひとつとっても本人が競技者としてどういう覚悟をもってやるかなんですよね。私たちの時代は、体の一部である髪の毛を丸めるということで、その試合に懸ける思いを表現していた。でも、そういった行動が慣習化する中で、逆に永原と松尾は髪を伸ばすことでその覚悟を示そうとしたんだと思います。

　実際に松尾は1500m、永原は3000m障害でインターハイ準優勝するなど活躍してくれました。それ以上に日々の時間の正確性や部屋の整頓、授業態度などの『やるべきこと』は、むしろ髪を伸ばしてからの方がしっかりしたと思います」

　それまでの慣例を変えたからダメになった。自身以上に、伝統あるチームに対してそんなことは絶対に言わせない――。それは、まさに高見澤の教えてきた「自覚と責任」の発露だったと言える。

昨年の全国高校駅伝。佐久長聖高、3区吉岡大翔から4区山口竣平へ。山口は自ら坊主頭を選択した　©AFLO

　ちなみに、従来通りのスタイルで覚悟を見せる選手ももちろんいる。

　1月の都道府県対抗駅伝で大会最優秀選手に選ばれた現3年生の山口峻平は、大会前に「気合を入れたいんで」と頭を丸め、高見澤をヒヤヒヤさせたという。

「本人が納得できる髪型なら何でもいいと思うんですけど……ただ、冬は風邪ひくから『五厘（刈り）は止めてくれ！』と言っているんですけどね（笑）」

「スマホ禁止」もやめた

　また、近年の佐久長聖高ではもうひとつ大きな変化があった。それは、禁止していた部員のスマホ利用が解禁されたことだ。

「4年前くらいからですかね。いまの学生は入学時からみんな持っていたと思うので」

　きっかけのひとつになったのは、学生が進学したある大学の監督からの指摘だった。

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