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三浦孝太は「瞳孔ガン開きで睨んできた」…“成り上がり男”YA-MANはカズの息子をどう丸裸にしたのか?「もっと温厚かと思ったけど…」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2023/05/10 17:03
5月6日の『RIZIN.42』で拳を交錯させるYA-MAN(左)と三浦孝太。「キングカズの息子」を相手に、YA-MANはMMAデビュー戦をKO勝利で飾った
立ち技に比べて戦術の幅が広いMMAでは、自らのベースを活かすスタイルを選ぶことができる。もちろん、逆に自分の苦手分野に取り組むこともできる。MMAファイターとしてのYA-MANが強くなる方法論は、4月29日に開催された『RIZIN LANDMARK 5』で斎藤裕のタックルを切りまくった平本蓮のそれと酷似していた。戦前には本人も「平本選手(の闘い方)と近いものになると思う」と認めている。具体的にいうと、それはテイクダウンディフェンスに重きを置くスタイルだ。
案の定、三浦がタックルでテイクダウンを狙ってきても、YA-MANは背中一面をキャンバスにつけることなくすぐ立ち上がる。三浦が首に片腕を巻きつけてきたときも、慌てる素振りは一切なかった。
「フロントチョークは絶対にやってくると予想していたので、かけられても落ち着いていました。向こうは思い切り絞めてきたけど、入っていなかった。だから無理に反撃せずにそのまま力を使わせて、緩んだところで一気に逃げようと思いました。バックをとられてからの逃げも練習した通りでした」
MMAの指導を受けた「TRIBE TOKYO MMA」の長南亮代表からは基礎を徹底的に叩き込まれた。
「ぶっちゃけ、三浦選手がいままでやった相手との試合は参考にはならなかったので、何がどれくらい強いのかもわからない。だから基礎をやろうと。一般会員の人たちと一緒に初心者クラスにも出ていました」
奇をてらわずにMMAと向かい合ったからこそ、YA-MANはMMAのキャリアに勝る相手と対峙しても、けっしてフィジカル負けすることはなかった。相対した三浦も「思ったよりフィジカルが強かった」と振り返る。
「テイクダウンをとったあとも反転される場面があった。あれは想定外でした」
キックボクサーがMMAに挑戦・転向すると、まずMMAファイターのフィジカルの強さを感じるケースが多い。投げや寝技のないキックでは、倒されまいとするバランス感覚を養う必要がないからだ。しかし、今回はその逆のパターンだったことになる。