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藤井聡太“A級1期で名人挑戦”以外も激闘! 順位戦の明暗「渡辺明名人と“ヤケ食い焼肉”の佐々木勇気・新八段らがA級へ」「千駄ヶ谷の受け師は…」
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byJIJI PRESS
posted2023/03/18 11:00
藤井聡太五冠が名人戦挑戦者となったA級プレーオフ。順位戦は各クラスで壮絶な戦いが続いた
“藤井キラー”、“千駄ヶ谷の受け師”もB級1組に昇級
【B級2組】
9勝1敗の大橋貴洸・新七段(30)、8勝2敗の木村一基九段(49)、増田康宏・新七段(25)は、B級1組へともに昇級した。
大橋七段は2016年10月に四段に昇段した。その後は、同期の藤井四段の大活躍であまり目立たなかったが、着実に力をつけていった。藤井五冠に公式戦で勝ち越ししている(4勝2敗)数少ない棋士だ。2020年度にC級1組へ昇級し、3期連続で今期はB級1組へ昇級した。
彼は「龍心洸々」という言葉を座右の銘にしている。龍のように高みを目指し、自分の心を磨き続け、水が湧き立ち光りきらめくような次の次元に進んでいく、という意味だという。赤や青の原色のスーツがよく似合う、個性派の棋士である。
木村九段は前期にB級2組へ降級したが、元王位の実力を出してB級1組へ1期で復帰した。今期の昇級者の中で最年長で、自称「おじさん棋士」である。異名である「千駄ヶ谷の受け師」の本領を発揮すれば、A級への再昇級は十分に可能だ。
増田七段は以前に「矢倉は終わった」「詰将棋の勉強は必要ない」との発言が物議をかもした。そうした独自の将棋観を持っていたが、不調に陥った時期があった。そんなときに永瀬拓矢王座(30)と研究会で指す機会ができ、以後は良い影響を受けて将棋の内容が充実してきたという。
7年前の三段リーグで辛い経験をした渡辺和史
【C級1組】
9勝1敗の石井健太郎六段(30)、青嶋未来六段(28)、渡辺和史・新六段(28)は、B級2組へともに昇級した。
石井六段は過去8期の順位戦ですべて勝ち越し、安定した実力を持っている。2019年度にはC級1組で9勝1敗の好成績を挙げながら、順位下位によって昇級できなかった。しかし、くさらずに努力を続けて今期の昇級へつなげた。
青嶋六段は7期目のC級1組で昇級した。体力をつけるために、運動を始めたのが良かったという。趣味はチェスで、以前に全日本選手権で優勝したほどの実力がある。渡辺五段は最終戦の昇級争いで4番手だったが、9連勝していた伊藤匠五段(20)が敗れたことで、順位上位によって前期に続いて昇級した。
私こと田丸昇九段は、2016年3月の三段リーグ最終日の渡辺三段のことが、今でも思い出される。11勝3敗から2敗したが、最終日で2局のうち1勝すれば、結果的に四段に昇段した。しかし、渡辺は4連敗してしまった。そして、渡辺らの昇段候補が次々と敗れたことで、昇段争いで7番手だった私の弟子の井出隼平三段(当時24)は12勝6敗の成績を挙げ、1%という奇跡的な確率で四段に昇段したのだ。