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藤井聡太「最年少名人挑戦」有力も…5人プレーオフだと“4連勝”あるのみ? A級順位戦最終局の状況を田丸昇九段が整理する
posted2023/02/27 17:02
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
日本将棋連盟
2022年度のA級順位戦は、3月2日の最終戦で大詰めを迎える。25、26日の王将戦第5局で羽生善治九段相手にシリーズ3勝目を挙げた藤井聡太五冠(20=竜王/王位/叡王/王将/棋聖)が、A級1期目にして名人戦の挑戦者争いで有力だ。しかし前節の8回戦で敗れて6勝2敗となっており、藤井らが9回戦で敗れると、最大で5人のプレーオフになる可能性がある。最終戦の勝敗予想と成り行き、過去のプレーオフ、A級1期目の棋士の名人戦初挑戦などについて、田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書は当時】
「将棋界の一番長い日」A級順位戦の注目度は高い
A級順位戦の最終戦は「将棋界の一番長い日」と呼ばれている。名人戦の挑戦者争い、一流棋士の証しであるA級の地位を守る残留争いなど、過去にはいろいろな盤上ドラマが繰り広げられてきた。メディアや将棋ファンの注目度もかなり高い。
2023年のA級最終戦は、3月2日に静岡県静岡市「浮月楼」で全5局が一斉に行われる。庭園の池に浮かぶ月の美しさが名称の由来というその料亭は、落ち着いた佇まいがあって最終決戦の場にふさわしい。2018年から6年連続で対局場になっていて、「将棋名人戦第0局」とも形容されている。なお、江戸幕府の最後の将軍となった十五代・徳川慶喜は、大政奉還後の明治2年から20年にわたって「浮月楼」に住んでいたという。
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A級順位戦の最終戦を迎える時点で、各棋士の成績は次のとおり(カッコ内は年齢とA級の順位)。
【6勝2敗】 広瀬章人八段(36/5位) 藤井聡太五冠(20/9位)
【5勝3敗】 斎藤慎太郎八段(29/1位) 豊島将之九段(32/4位) 永瀬拓矢王座(30/6位) 菅井竜也八段(30/8位)
【4勝4敗】 稲葉陽八段(34/10位)
【3勝5敗】 佐藤天彦九段(35/3位)
【1勝7敗】 糸谷哲郎八段(34/2位)
【0勝8敗】 佐藤康光九段(53/7位)
名人戦挑戦者になる可能性のある棋士は6人もいる
A級順位戦の最終戦で、名人戦の挑戦者になる可能性がある棋士は、何と6人もいる。それに関連する対局は次の4局(▲は先手番)。
《広瀬八段ー▲菅井八段》
対戦成績は広瀬の4勝3敗。戦型は菅井の中飛車が予想される。前期のA級順位戦では菅井が勝った。
《▲藤井五冠ー稲葉八段》
対戦成績は藤井の5勝2敗。戦型は相掛かりが予想される。前期のB級1組順位戦では稲葉が勝った。稲葉は2017年の名人戦で挑戦者になった。
《▲斎藤八段ー永瀬王座》
対戦成績は永瀬の6勝4敗。戦型は相掛かりが予想される。前期のA級順位戦では斎藤が勝った。斎藤は2021年、22年の名人戦で挑戦者になった。
《▲豊島九段ー佐藤天九段》
対戦成績は豊島の20勝6敗。戦型は相掛かりが予想される。豊島は直近の対局で佐藤に13連勝している。両者は以前に名人を獲得した(佐藤は2016年から18年の3期、豊島は2019年の1期)。
あと1局は▲糸谷八段-佐藤康九段。両者はB級1組への降級がすでに決定している。