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藤井聡太「最年少名人挑戦」有力も…5人プレーオフだと“4連勝”あるのみ? A級順位戦最終局の状況を田丸昇九段が整理する 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph by日本将棋連盟

posted2023/02/27 17:02

藤井聡太「最年少名人挑戦」有力も…5人プレーオフだと“4連勝”あるのみ? A級順位戦最終局の状況を田丸昇九段が整理する<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

王将戦第5局前日検分での藤井聡太五冠。3月2日には最年少名人挑戦に向けて、順位戦A級最終局を戦う

藤井五冠が名人戦挑戦者に決まるパターンは?

 以上のデータを基にして、名人戦4連覇を目指す渡辺明名人(38=棋王を含めて二冠)への挑戦者争いを推測する。

 (1)対戦成績だけで予想すると、広瀬と藤井が勝つことになり、両者のプレーオフで名人戦の挑戦者が決まる。どちらが勝っても初挑戦である。

 (2)広瀬が勝って藤井が敗れると、広瀬が挑戦者になる。

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 (3)広瀬が敗れて藤井が勝つと、藤井が挑戦者になる。

 (4)広瀬と藤井が敗れ、豊島も敗れると、斎藤-永瀬の勝者/広瀬/菅井/藤井の4人でプレーオフを行う。

 (5)広瀬と藤井が敗れ、豊島が勝つと、斎藤-永瀬の勝者/豊島/広瀬/菅井/藤井の5人でプレーオフを行う。

 (1)(2)(3)のケースは、1局のプレーオフ、または無勝負で名人戦の挑戦者が決まる。(4)のケースは計3局のプレーオフ、(5)のケースは計4局のプレーオフで、名人戦の挑戦者が決まる。

 複数のプレーオフの方式は、一般的なトーナメントではない。今期のA級順位を基にして、下位の棋士から勝ち上がっていく「パラマス方式」で、名人戦の挑戦者が決まる。

 (5)のケースで、斎藤-永瀬の勝者を斎藤と仮定すると、次のような対局が組まれる。最初に9位の藤井と8位の菅井が対局(A)。Aの勝者と5位の広瀬が対局(B)。Bの勝者と4位の豊島が対局(C)。Cの勝者と1位の斎藤が対局し、その勝者が名人戦の挑戦者に決まる。

 つまり、藤井はプレーオフなしで名人戦の挑戦者になる可能性がある反面、最多の5人のプレーオフでは最下位のために、4連勝しないと名人戦の挑戦者になれない。天と地ほどの違いがあり、藤井の対局日程はさらに過密になりそうだ。

 一方で、斎藤は対戦相手にかかわらず1勝すれば、3期連続で名人戦の挑戦者に決まる。

4人以上でプレーオフが行われたのは4例ある

 過去50年のA級順位戦の最終戦の結果によって、4人以上でプレーオフが行われたのは4例ある。

 1979年には、上位から森けい二八段、米長邦雄棋王、大山康晴十五世名人、二上達也九段の4人が6勝3敗で並び、2番手の米長がプレーオフを制した。1992年には、上位から谷川浩司竜王、南芳一九段、高橋道雄九段、大山十五世名人の4人が6勝3敗で並び、3番手の高橋がプレーオフを制した。

 ガンの再発、手術から公式戦に復帰した大山の驚異的な生命力は称賛された。しかし、無理がたたったのか1992年7月に69歳で死去した。

【次ページ】 とはいえ「先手番」である藤井五冠が有力か

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