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「藤井曲線とは何か?」AI研究の東大院生棋士・谷合廣紀四段が解説「基本的には右肩上がりの単調増加関数」「相手が強いからこそ描かれる」
text by
内田晶Akira Uchida
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2023/01/29 17:58
王将戦第3局でも話題となった藤井曲線。現在大学院生の谷合廣紀四段にその定義と要因を解説してもらった
「状況が理解できないとどう応援していいか迷いますよね。藤井さんがちょっといいとなったら『さらにリードが広がるように』と力が入りますし、悪いときは『頑張って!』と声援を送ることでしょう。初心者の方の参入障壁をなくしたというか、いろいろな方が共感しながら応援できるようになったのは素晴らしいことだと思います」
藤井伝説を語る上で欠かせない対局がある。昨年の3月23日に行われた第34期竜王戦ランキング戦2組準決勝の松尾歩八段戦。藤井二冠(当時)が終盤で放った▲4一銀のタダ捨てはメガトン級の絶妙手として観戦者に強烈なインパクトを与えた。
「初めはAIが違う手を有力手として挙げていて、時間が経ってから▲4一銀が第一候補に出てきました。それを見た解説者の『▲4一銀なんて手があるのか、人間がそんな手を指せるんですかね』みたいなフリがあったからこそ、観ている人も『藤井さん、本当に指すんじゃないか』とワクワクしたんじゃないでしょうか。その後、藤井さんが1時間近く長考して▲4一銀が指されましたが、その間にファンの方の期待もどんどん盛り上がっていったことで、この一手がより伝説的になったのでしょう」
ソフトは意図までは示してくれない
将棋界にAIが浸透してきたとはいえ、今も嫌悪感を拭えないといった意見があるのは事実だ。しかし、谷合は「いい面のほうが多い。いまAIが将棋をエンタメとしてどんどん面白くしてくれている」と擁護する。AIに頼りっきりになるのではなく、人間と共存してこそ互いの良さをより引き出し合うと見ている。
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