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最高速度275km! 5年目に大幅進化する電動バイクレース最高峰「MotoE」の現在地《日本からは大久保光が参戦》 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2023/01/26 11:00

最高速度275km! 5年目に大幅進化する電動バイクレース最高峰「MotoE」の現在地《日本からは大久保光が参戦》<Number Web> photograph by Ducati

プロトタイプでテストを重ねるドゥカティV21L。エンジンを搭載するマシンとの外観上の大きな違いはマフラーがないことくらい

 そのMotoEに日本人でただひとり参戦し、3年目のシーズンを迎える大久保光は、今年はアジョからテック3へとチームを移籍した。このカテゴリーに参加しているライダーのほとんどが、他のカテゴリーとの掛け持ちで走っている。その理由は、レース開催数の少ないMotoEだけでは収入も少ないためで、大久保もいくつものカテゴリーを掛け持ちするライダーのひとりである。昨年はMotoEで初表彰台を獲得したほか、鈴鹿8時間耐久レース、ドイツ選手権、イタリア選手権など、シーズンを通して全20レースほどに出場する「助っ人ライダー」として活躍した。

 そんな大久保に、MotoEのパフォーマンスなどについて語ってもらった。

唯一の日本人ライダーが語るMotoE

「MotoEはMoto3、Moto2、MotoGPのスケジュールの合間に行われるので、朝の走行が早かったり、逆にすべての日程が終わった後の夕方だったり、普通の時間帯で走れることがあまりないが、とにかく、ライダーとしてはMotoGPのパドックにいることが大事だと思うし、いろいろな人脈が出来た。マシンについては、これまで2年間乗ってきたエネルジカは、フルパワーでレースができるのは、4〜5周まで。そこから先はあきらかにパフォーマンスが落ちていくので、どんどん乗り方、アクセルの開け方を変えていかなければならない。そこがMotoEの難しさ。

 フリー、予選もバッテリーの持ちの問題で基本的に8周以上は走れない。駆け引きなんてしている場合ではないし、とにかくコースに出たらバッテリーを無駄に出来ないので常に全力という厳しい部分もあるが、ある意味新鮮。これから、このカテゴリーがどう発展していくのかわからないが、MotoEの注目は上がっているし、レベル的にもMoto2やWSB(スーパーバイク世界選手権)などを目指すライダーにはいいカテゴリーだと思う。エネルジカも年々進化していたが、ドゥカティが作るマシンがどんなものなのか、すごく楽しみ。3月の初テストが待ち遠しい」

 29歳になる大久保は、これまで全日本ロード、アジア選手権でタイトルを獲得。スーパースポーツ世界選手権には5年間参戦し、4位を最高にトップグループで戦うひとりとして注目された。将来は「WSBに参戦するのが目標」と語り、MotoEで結果を残してシート獲得を目指している。今年は初優勝を目標にどんな活躍を見せてくれるのか。カテゴリーが世界選手権に昇格したことで、一段と気合を入れている。

【次ページ】 変化を迫られるモーターサイクルレース

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