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今村聖奈(19歳)が見せつけた「スター性」 史上初、JRA女性ジョッキー4名の“競演”が華やかだった…減量制度と“男女差”の大切な論点
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph bySankei Shinbun
posted2023/01/18 11:00
史上初のJRA女性騎手そろい踏みとなった、1月15日の小倉12Rにて、ヒノクニとともに勝利を飾った今村聖奈(19歳)
減量制度「菜七子ルール」をどう考えるか?
昨年の4人の女性騎手の勝ち鞍は、今村51勝、永島21勝、古川10勝、藤田8勝の計90勝。これだけの勝ち鞍を、既存の男性騎手が奪われた、と見ることもできる。
昨年、福永祐一が101勝、坂井瑠星が98勝、吉田隼人が83勝を挙げた。彼らはGIも勝っているので中身は違うが、トータルの勝ち鞍という点では、あのクラスの騎手と同等の影響力を持つに至ったわけだ。
4人が揃い踏みした1月15日だって、彼女たちは計16鞍に乗り3勝した。今年3月から新人の女性騎手が2人加わるので、JRAのレースシーンにおける女性騎手の存在感はさらに増していくだろう。
女性騎手の活躍に大きく影響しているのは、かつては「菜七子ルール」とも呼ばれた減量制度だ。2019年3月から、女性騎手の負担重量の減量が最大4kgとなり、いくら勝っても永続的に2kgの減量の特典が与えられる(特別競走とハンデ戦以外)というものだ。通算50勝までは★印がつく4kg、51~100勝は▲の3kg、101勝以上は◇の2kgとなる。
15日に4人が乗ったレースでは、勝った今村は▲、永島と古川は★、藤田は◇だった。
フランスでも同様の女性騎手に対する特典があるのだが、2kgでスタートしたところ、女性騎手の勝利が増えて男性騎手との不公平感が大きくなりすぎたため、1.5kgに改定された。
女性騎手の活躍次第では、“ルールの見直し”も
また、短期免許で来日する外国人女性騎手は、すでに実績があるからという理由で、この特典は適用外となっている。昨秋、夫のトム・マーカンドとともに短期免許で来日していたイギリスのホリー・ドイルにも当然適用されなかったのだが、このルールがないイギリスでGIを勝ち、2020年はリーディング2位の151勝、21年はイギリスの女性騎手のレコードを更新する172勝を挙げて3位、22年も2位の151勝をマークしたのだから、素晴らしい。
斤量が1kg違うと、ゴールするときには1馬身の差が出るとも言われている。減量制度は本来、経験の少ない若手騎手に対する一種の「救済策」であり、ドイルのような「本物」は、それなしでも結果を出している。
日本でも、フランスのように、女性騎手が勝ちすぎるからと男性騎手からクレームがついてルールが変更になる日は来るだろうか。ルール導入当初、JRAは「柔軟に見直していくことも考えている」としていたので、可能性はゼロではない。
そうした議論が本気でなされるようになるくらい、次は、女性騎手による重賞での揃い踏み、重賞でのワンツー、そしてGIでの――と、彼女たちのさらなる活躍を祈りたい。
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