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投資詐欺、愛馬の死…今年ダービー出走、元タカラジェンヌの牧場オーナーが信じ続けた“女の直感”「いつも最後は馬に助けられるんです」

posted2022/12/25 17:02

 
投資詐欺、愛馬の死…今年ダービー出走、元タカラジェンヌの牧場オーナーが信じ続けた“女の直感”「いつも最後は馬に助けられるんです」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

宝塚歌劇団の花組トップ娘役も務めた岩崎美由紀さん。牧場の代表となり、時に痛い目に遭いながらも、その直感によってダービーへの道をひらいた

text by

伊藤秀倫

伊藤秀倫Hidenori Ito

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photograph by

Kiichi Matsumoto

 今年、牡馬クラシック三冠に“皆勤賞”で出走したビーアストニッシド。生産牧場のヴェルサイユファーム代表の岩崎美由紀さんは2015年から亡き夫の遺志を継いで、牧場経営の経験はない中で牧場のオーナーとなった。引き継いで判明したのは3億円の借金。しかも元々いたスタッフは辞めてしまう。一体、そんな苦況からどのようにダービー出走馬を生み出すまでになったのか? インタビューで「牧場経営の苦労」と「ビーアストニッシドの誕生秘話」を聞いた(全3回のうち第2回/前回は#1、続きは#3

自宅を手放し、自分の貯金も借金返済に充てた

 美由紀さんが亡き夫から三城牧場を引き継いだとき、借金の総額は3億円を超えていた。まずこれをどうにかしないことには、牧場は1年も持たないことは明らかだった。そこで美由紀さんと崇文さんは牧場の経営を抜本的に見直すことにした。

「当時は繁殖牝馬と1歳馬のほかに育成馬も預かっていたのですが、ウチみたいな規模の牧場では育成はなかなか難しいし、正直人件費の負担も大きい。そこで育成部門を廃止して、繁殖一本に絞ることにしたんです。もちろん、辞めてもらう育成部門のスタッフの子たちには次の就職先を探しました」

 だがそれだけでは借金は減っていかない。そこで美由紀さんは、自らの「退路」を断つ選択をする。亡き夫との思い出が詰まった札幌の家を手放し、その代金を借金返済に充てたのである。

「あの家は私が設計した家でしたので、本当にすごい思い入れがあったんです。私、広い空間が好きなので『リビングは50畳くらいにしたい!』と言ったら、主人に『札幌でそれは無理』と却下されまして(笑)。それでも玄関は何人寝れるかな、というぐらい広くて吹き抜けになっていて、私のほぼ100%理想に近い家でしたので、手放すのは本当に辛い決断ではありました」

 夫の死後、東京を離れて札幌に移り住み、日高の牧場には車で通っていた美由紀さんだったが、札幌の家を売却した後は、本格的に日高へと生活の拠点を移すことになった。

「それまではずっと東京に住んでいたものですから、札幌に来たときは、こんな雪の深いところに皆さん、よく住んでらっしゃるな、とカルチャーショックでしたね。さらに日高にくるとまた本当に何もなくて……(笑)」

【次ページ】 「刑事さんでも絶対にダマされますから」

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