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大阪桐蔭「涙の下関国際戦」から3カ月…エース前田「今だから言えることですけど」発展途上でも“史上初連覇“、新チームは何が違う? 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2022/11/26 17:00

大阪桐蔭「涙の下関国際戦」から3カ月…エース前田「今だから言えることですけど」発展途上でも“史上初連覇“、新チームは何が違う?<Number Web> photograph by KYODO

“涙の下関国際戦”から3カ月、明治神宮大会で「史上初の連覇」を成し遂げた大阪桐蔭。エース前田擁する今年チームは何が違う?

 昨年は監督と自身が「今は伸び伸びやる段階」と繰り返していたように、ストレートを中心としたマウンド捌きには思い切りの良さがあった。それは、3試合15回で17奪三振、防御率1.80という数字でも打ち出されていた。

 伸び伸びから、地に足を付けて――。

 今年の前田は、そんなピッチングだった。

 東邦との初戦。3回に同点ホームランを浴びるなど、初球からストレートを狙い打ちされていると判断した前田は、変化球を織り交ぜながら打たせて取るピッチングを意識し、8回を投げ1失点にまとめた。

 前田のマウンドでの冷静さは、仙台育英との準決勝でより顕著となった。

 6回まで9四死球とコントロールが定まらないなかでも、前田は「上体が前に突っ込んでいたので、軸足で立った時の重心を気持ちうしろに置くようにしました」とフォームに微調整を施し、7回あたりから安定感を取り戻した。自身でも「粘れた」と振り返っていたように、10四死球、4失点の完投。投じた161球は野球人生で最多だった。

広陵と激戦の決勝…「自分が投げて流れを」

 広陵との決勝戦。ベンチスタートの前田は、「自分が引っ張る」との意思を強く示す。

「俺を出してくださいよ」

 0-5と劣勢のなか、監督の西谷にそう訴えんばかりに、自らの判断でブルペンに向かい準備を始める。意図はこうだ。

「5点を取られてもなかなか声がかからなかったので、『自分が投げて流れを変えたい』というアピールもありました」

 6-5と勝ち越した直後の6回裏、「本人には伝えていなかったが、リリーフでとは考えていた」という西谷のプラン通りマウンドに送り出された前田は、4回を無失点、7奪三振と仕事を全うし、勝利を実らせた。

 今年の明治神宮大会でも3試合に登板し、成績は21回で17安打、19奪三振、13四死球、防御率2.14。目一杯、腕を振った昨年より数字は劣るが、崩れそうになっても立て直せる修正力など、違う顔を見せた。

 エースでキャプテン。大阪桐蔭の大黒柱は、公約通り自分が積極的に先陣を切り、明治神宮大会連覇の原動力となった。

 ただし、これは前田個人のプライドであり、チームのスタイルと同義ではない。

前田に集まる注目…だが西谷監督は

 絶対的な存在であるが故に前田にばかり注目が集まる必然を感じながら、監督の西谷はあくまでチームでもぎ取った勝利であることを強調した。

【次ページ】 今年の大阪桐蔭は何が違う?

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