濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
話題のフワちゃんの指導も担当…24歳でキャリア8年、スターダム葉月の魅力と“異色のスタンス”「プロレスは技の数の競い合いじゃない」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/09/22 11:04
リーグ戦5★GPでは開幕7連勝で勢いに乗った葉月。他の選手とは異なる“プロレスへのスタンス”も聞いた
「飯田はどれだけ厳しくしてもついてきた。同い年なんですけど妹みたいに可愛いんです。私がプロレスから離れている時も食事に行ったり。よく“復帰しないんですか”と聞かれたし、同じSTARSになった時は泣いてくれた。いや、まだまだ負けるつもりはなかったんですけど、私がいない間に成長してたんですね。そこは大ケガをして長期欠場も経験しながら踏ん張ってきた飯田の意地でもあると思います。
負けたのは悔しいです、もちろん。大事な“勝ち点2”を飯田に取られてしまった。でもやっぱり、嬉しさも大きいんですよ。自分が教えた選手がここまで成長したのかって」
自分の負けという形であっても、後輩の成長が嬉しい。そう感じることは、おそらく葉月の最大の弱点だろう。「闘いということを考えたら、それじゃいけない」と本人も言う。ただ、別の考え方もできる。
「後輩が成長しているということは、私と張り合える選手が増えているということ。それは今後の自分にとっても、団体にとってもプラスだと思います」
「自分のことだけじゃなくて、スターダム全体を見てます」
9月24日には、かつて保持したハイスピード王座に久々の挑戦。王者・AZMからの指名だ。フキゲンです★も交えた3WAY戦は、葉月が王者だった時と同じ顔合わせ。その時はAZMがフキゲン(当時のリングネームはDEATH山さん)に敗れている。
「AZMにはずっと期待していて、あの頃も自分の次のチャンピオンにはAZMになってほしかったんです。今回はそのAZMに挑戦する形。これまでもタッグで当たることはありましたけど、タイトルマッチという場でチャンピオンとしてのAZMの力を体感したいですね」
ここでもやはり、葉月は相手のことを気にしている。自分が勝つため、上に行くためなら周りを蹴落としてでも、といった感覚は薄いようだ。
「自分のことだけじゃなくて、スターダム全体を見てますね。誰よりもその意識が強いかもしれない。もちろん自分が勝ちたいし上に行きたいんですけど、でもスターダムの大会は自分の試合だけじゃないんですよ。スターダムの大会をもっと面白くするためには、全体がレベルアップしないといけない。自分の試合が“トイレ休憩タイム”になったり、お客さんが携帯見てたら嫌じゃないですか。第1試合からメインまで、すべて見逃せないのがスターダム。そういう団体にしたいので」
コーチとして何より大事にしている「受身」
選手として、またコーチとして何よりも大事にしているのは基礎、とりわけ受身だ。葉月が指導する際は、練習時間の半分以上を受身に費やすという。技もドロップキックなど基本的なものを重視しているそうだ。
「新人時代の飯田のドロップキックがヘナチョコすぎて、試合後すぐに呼び出して“あんなドロップキックならやらないほうがいい”って言ったこともありますね。泣いてました、飯田(苦笑)。でもそれくらい大事なんです。ドロップキック、(ボディ)スラム、逆エビ固め。新人が使う技ってそれくらいじゃないですか。それを大事にしなきゃいけないし、キャリアを積んでもそれは一緒。技の数が多ければいいというわけではないですし」