葉月の試合が見ていて面白い理由

　葉月のフィニッシュ技は垂直落下式ブレーンバスター。マット界には同じ技を使う選手がたくさんいる。それでも「これが決まったら絶対3カウント、そう思わせる説得力のある技にしたい」と葉月。実際、そうなっていると言っていい。同時に葉月は「誰でも使える技ではないと思います。見よう見まねで使うと危ない技なので」とも。垂直落下式という名の通り、この技は相手を頭から落とすものだ。といって、対戦相手にケガをさせるためにプロレスをやっているわけではない。

「勝つために出す技ですし迫力も大切です。でも相手が受け切れるように、落とす角度を調節してもいますね。レスラーはお客さんの拍手、歓声がほしいから、つい派手な技を使いたくなってしまう。でも今のスターダムは毎月のようにビッグマッチがあるので、その度に新しい派手な技を出していたらキリがない」

葉月のフィニッシュ技、垂直落下式ブレーンバスター

　葉月が使うのは顔面ウォッシュにコードブレーカー、セントーン、クロスフェイスロックといった技。垂直落下式ブレーンバスター以上の技を繰り出すつもりは、今のところないそうだ。それでも結果は出ているし、葉月の試合は面白い。技術が安定しているからムラがない、ということなのだろう。

　リーグ戦で優勝したら赤いベルトに挑戦したいし、最大の目標が白いベルトであることは変わらない。ベルト以外の部分で目指すレスラー像もある。それは「どんな試合でも、誰よりも綺麗に相手の技を受けるレスラー」だ。

「プロレスは技の数の競い合いじゃない」

「プロレスは受けてなんぼですから。“受け”がよければ試合もよく見える。そういう意味でも受身の練習は大事なんです。自分の“受け”によって後輩の闘いぶりが注目されたら、それもスターダムにとってはいいことじゃないですか」

　受けることで相手を光らせる。派手な技に頼らず試合を構成する。「単に技を増やすんじゃなく、かけ方のバリエーションで見せることもできます」と葉月は言う。

「今のスターダムは試合数も多いので、ケガには特に気をつけないと。未完成な新技を使うような無茶をしちゃいけないし、プロレスは技の数の競い合いじゃない」

「プロレスは受けてなんぼ」と語る葉月

　これまで何人ものスターダムの選手に取材してきたが、ほぼ全員が埋もれないために必死だと語っていた。スターダムは所属選手が多く、みな個性が強い。だからトップ選手であってもポジションに安住していられないのだ。そんな中で、葉月のスタンスは異色だ。自身もプレイヤーでありながら、俯瞰で全体を見る。それはプロレスから離れていた時期があるからなのかもしれない。プロレスは1人ではできないし、ファンが見ているのは1試合ではなく大会全体なのだということも分かる。

　また葉月は格闘技をよく見るそうだ。那須川天心vs.武尊が行なわれた『THE MATCH 2022』東京ドーム大会も会場観戦した。“強さ”を徹底的に追求する格闘技に惹かれるからこそ「じゃあ、プロレスならではの面白さってなんだろう」とも考える。“受け”もその一つだ。

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