濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
話題のフワちゃんの指導も担当…24歳でキャリア8年、スターダム葉月の魅力と“異色のスタンス”「プロレスは技の数の競い合いじゃない」
posted2022/09/22 11:04
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
スターダムのシングルリーグ戦「5★STAR GP」は、開催期間が丸2カ月という長丁場のハードな闘いだ。出場選手は26名、2ブロック制だから、各選手12試合ずつ闘うことになる。両ブロックのトップが激突する決勝戦は10月1日の開催だ。
リーグ前半戦で飛び抜けた結果を残したのが葉月。開幕戦のメインイベントでジュリアを下すと、7連勝で勝ち点14を積み上げた。
「自分でもビックリするくらい絶好調でしたね」
葉月自身もそう語る。初戦がジュリアだったのも大きかった。
「最初からエンジンを全開にしないと勝てない相手だし、絶対に負けたくない相手でもあるので」
葉月は2019年に一度引退している。人間関係が原因の不本意なもので、団体を批判するようなコメントも話題になった。引退が決まっている中、移籍してきたジュリアのスターダム初戦でシングルマッチ。葉月は引退する自分が「踏み台」にされていると感じた。実際に葉月は敗れ、試合後はジュリアと木村花が大乱闘を展開。印象としては確かに“ジュリアのための試合”だった。
敗れたジュリアも「もやもやが晴れた」
その後すぐ、葉月は引退式を行なってスターダムを離れた。ジュリアはずっと「モヤモヤ」を抱えていたという。しかし葉月は昨年5月の木村花メモリアル興行でリングに上がり、8月にはスターダムの会場に現れて正式に現役復帰。今回のリーグ戦で、ジュリアと久々の一騎討ちとなった。敗れたジュリアは「モヤモヤが晴れた気がする」。それは葉月も同じだった。
「私はやめる前に周りをざわつかせるようなことを言っていたので。そういったものを清算する試合でもあったと思います。あの時の私はスターダムが大嫌いだと言ってやめました。普通は円満じゃなくても円満だと言ってやめるものだと思うんですけど、それができなくて」
引退後は一般の仕事をしながら、ずっとスターダムのことは気にしていたし、プロレスをやりたい気持ちはあった。やめたくてやめたわけではなかったのだ。「どうして自分がやめなきゃいけないのか」、「大好きなプロレスを邪魔されてしまった」という気持ちは常にあった。
「それに花のこともありましたから」
復帰をエグゼクティブ・プロデューサーのロッシー小川氏に相談すると、二つ返事だった。「過去は過去だから。大事なのは今」。言われたのはそれだけだ。もちろん、いろいろあった古巣への復帰は精神的にハードルが高かった。他団体での復帰も考えなかったわけではない。それでも「自分が育ったのはスターダム」という気持ちが強かった。目標にしていた“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダム戴冠もあきらめきれなかった。