「それに（2020年に亡くなった）花のこともありましたから。人生何があるか分からない。誰にも認められなくても、自分がやりたいことをやったほうが幸せになれるんじゃないかって」

気にしていた“団体生え抜き選手”のこと

　復帰にあたって、葉月が気にしていたのは団体生え抜き選手のことだった。ジュリアをはじめ、近年のスターダムには他団体から選手が続々と加入している。

「外から来た選手が活躍して、生え抜きは悔しくないのかなって。そういうことはみんな意識してなかったのかもしれないですね。それなら、自分が復帰して先頭に立ったらどうだろうと。さすがに腹を立てていろいろ考えますよね。そういう刺激になりたかったんです」

タッグ王座は奪われたものの、リーグ戦ではなつぽいに勝利している

　復帰直後に林下詩美の“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダムに挑戦して熱戦を展開。少し前に復帰していた同期のコグマと組み、秋のタッグリーグで優勝を果たした。タッグ王座は2度戴冠。8月にベルトを奪われたものの、葉月にはコグマとのタッグで力を取り戻していったという感覚が強い。

「引退してからはジムも解約して、何の運動もしてなかったんです。久しぶりに練習したら、後ろ受身で頭を打ってしまうような状態。復帰したての時期は思うように動けなかったです。そういう時期にコグマとタッグを組めたのはよかった。コグマもプロレスから離れていたので“出戻り”だからこそ負けたくないという気持ちで頑張れました。タッグのチャンピオンになって追われる立場のしんどさも味わって、その上で3年ぶりに5★STAR GP出場。シングルプレイヤーとしての力を発揮するには、凄くいいタイミングでしたね。それに、ここで“個”としての力を伸ばせば、タッグとしてもさらに強くなれる」

「しっかり向き合いたいですね、麻優さんと」

　このリーグ戦から、葉月のキャリアは新たな段階に入ったと言っていいだろう。入場時には、復帰の際に用意していた黒の法被風ガウンを着るようになった。

「背中にある文字は違うんですけど、大江戸隊だった時と同じようなコスチュームですね。スターダムはみんなキラキラしたイメージだけど、私は黒とか和のイメージだなって。リーグ戦はあくまで個人としての闘いなので（所属ユニットの）STARSの選手のセコンドにもついてません」

今回のリーグ戦からは黒の法被風ガウンで登場

　9月23日の後楽園ホール大会では、STARSのリーダーである岩谷麻優と対戦する。

「去年、私が復帰をアピールしたのは、麻優さんが試合を終えたリングでした。麻優さんは“スターダムに文句を言っていなくなって、また戻ってきた。なぜ戻ってきたのか”と言ってました。その言葉への返事をする場が今度のシングルマッチだと思います。同じユニットでも、そこはしっかり向き合いたいですね、麻優さんと」

24歳にしてキャリア8年…コーチとしての思い

　リーグ戦は7連勝のあと3連敗。残る岩谷戦と渡辺桃戦は、決勝進出のため絶対に落とせない。3敗のうちの一つは、飯田沙耶に喫したものだ（9月12日の後楽園大会）。

教え子でもある飯田沙耶とも対戦

　葉月は中学卒業後すぐに入門しており、24歳で（途中ブランクを挟みつつ）キャリア8年になる。一時引退する以前から団体のコーチを務めてもいる。林下や上谷沙弥、飯田はデビュー前から指導してきた。つまり後輩であると同時に教え子だ。師匠である葉月に勝って、飯田は顔をクシャクシャにしていた。葉月の表情はと言えば、どことなく嬉しそうだった。

【次ページ】　「自分のことだけじゃなくて、スターダム全体を見てます」