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お手本はサッカー日本代表!? 日本バスケが200時間もかけて作った“東京五輪レポート”がスゴすぎる「一番懸念したのは“ミスの言及”」
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byJMPA
posted2022/09/12 08:22
男子代表の戦いぶりをまとめた59ページのレポートには、200時間を費やしたという
冨山がレポートを作成しながら一番気をつかったことは、日本代表として戦っている選手たちに対してのリスペクトの気持ちを忘れないことだった。
レポートの中には、うまくいったことだけでなく、うまくいかなかったことも書かれている。特に、大会3連敗だった男子代表の場合はミスしたプレーへの言及も多くなった。個人名を出して指摘している箇所もある。しかし、ミスした個々の選手を侮辱したり批判する意図はまったくないと、冨山は強調する。
「大会結果もあるので、選手がミスしたプレーにも言及せざるをえないところがあるんですよ。それって、選手側からするとどれだけつらいことかっていうのは僕もわかっているので。そもそも代表チームとして戦っているだけでも誇らしくあるべきこと。そこをあえて、みんなの学びのために入れているんですけれど……。
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全部を通して見たら、選手たちはみんな全力で戦いましたというのが伝わるように作っているつもりなんですけれど、一部だけ見るとどうしてもミスした部分が前に出てしまう。そこが、レポートを作りながら一番懸念していたところですね。声はあげていないけれど、そういうふうに感じてしまっている選手もいるかもしれないじゃないですか。今でもそれは気になっています。うまくいったことも取り上げなきゃいけないけれど、うまくいかなかったことも取り上げなければいけなくて、そこにはミスをした一個人がいるので」
一般公開することで多くの人の目に触れるレポートだからこそ、配慮したいところだった。個人批判するためのレポートではなく、あくまで日本代表が一丸となって前に進むためのレポート──。
東野も言う。
「あいつがだめだ、こいつがだめだっていう足の引っ張り合いではなく、篠山竜青が『日本一丸』(※)と書いてくれたように、ひとりひとりが仲間としてやったこと。テクニカルレポートもその一端としてあると思うんですよね」
※2018年6月、当時の男子日本代表がワールドカップ予選で4戦4敗と窮地にあったとき、篠山竜青(川崎ブレイブサンダース所属)が決意の一筆としてしたためた、日本代表のスローガン
(つづく)
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